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第3回 “G-SOX”の動向 【太田 康嗣】(2008/10/14)

2008年10月14日 


1.総務省の研究会が中間報告を発表

 昨年10月、総務省内に「地方公共団体における内部統制のあり方に関する研究会」が設置された。平成20年度末(09年3月)に最終報告が取りまとめられる予定であるが、今年3月に中間報告が発表されたので、そこから今後の動向を考えてみたい。なお、本稿では、地方自治体における内部統制を「G-SOX」と記載する。

2.G-SOXの枠組み

 中間報告は、「論点整理」という副題が示すとおり、地方自治体における内部統制の意義や基本的な課題を整理したレベルであるが、いわゆる「J-SOX」がベースになることの必要性と可能性が明示されている。
 つまり、中間報告は、冒頭で「地方公共団体は、民間企業と比べても、職務分掌等の内部統制の考え方が必ずしも十分に理解され、定着しているとはいえない状況にあるように思われる。従来は、公務員法制と、競争試験による人材選抜に基づく個人的資質の高さによって、個々の公務員の廉潔性や廉直性を担保し、それによって公務の適正性を確保してきたと考えられる。しかし、最近の不祥事件の続出により、そのような前提が揺らいでいるとみられる事態が生じており、業務内容及びプロセスを可視化したシステムによって、組織の透明性・効率性を担保していく必要がある。」としたうえで、企業会計審議会の「基準」や「実施基準」を引用しつつ、自治体における内部統制の意義や目的を述べており、J-SOXの枠組みを準用することが明示されている。また、「業務内容及びプロセスを可視化したシステム」の内容は、「具体的な事例や手法」として最終報告で示されることになっているが、J-SOXの「3点セット」がイメージされていることは明らかであろう。

3.G-SOXの課題

 このように、G-SOXは基本的にはJ-SOXがベースになると思われるが、当然、そのまま適用できるわけではない。中間報告でも「地方自治体における取り組みにあたっての課題」として整理されているが、とりわけ、業務量の膨大さと実態把握の難易度が大きな課題と思われる。
 これは、地方自治体という組織が、建設・医療・教育・金融・サービス等々実に多様な事業を展開する「超多角経営企業」であり、いかに小規模な自治体でもその業務プロセスは2000本近くになるうえ、これまで「業務内容及びプロセスの可視化」をやった経験もほとんど無く、さらには「団塊の世代」の大量退職時代を迎えて業務プロセスの全体像を知っている人材も急減しつつあるといった事情による。無論、国等との関係からくる現実的裁量権の制約や、役所特有の指揮命令系統など、地方自治体における内部統制上の課題は多いが、「可視化」に限って言えば、ボリュームと人的資源のアンバランスが大きな課題と思われる。

4.G-SOX実現のために

 作業ボリュームと人的資源のアンバランスへの対応をJ-SOXの教訓を踏まえて考えると、まず、文書化ツールの活用が必要であると思われる。J-SOXでは、エクセル等を使用して文書化作業を行った企業も多いと思われるが、地方自治体では、エクセル等の利用頻度があまり高くないため、むしろ「3点セット」作成の専用ツールを利用したほうが効率的だろう。
 次に、「リスク」の発見視座、すなわちJ-SOXでいう「アサーション」の設定が重要となろう。地方自治体の内部統制では、民間のように「財務報告の信頼性」という単一視点からの可視化ではなく、「業務の有効性・効率性」「法令等の遵守」を核とした複数の目的が並立することになると思われることから、目的ごとにどのようなアサーションを設定するかが重要な鍵を握ると思われる。
 最後に、複数自治体による作業の共同化も必要であろう。民間企業の場合は、例え同じ業種・規模の会社でも、それぞれの業務プロセスには独自性があり、また、企業秘密である場合も多いが、地方自治体の場合は、業務の類似性が高く、秘密性も原則的には無いはずである。地方自治体は、それぞれ、社会的背景や規模等からいくつかのグループ(類似団体)に区分されているが、例えば、これらのグループごとに作業を行うことで、相当程度、コストと労力を削減することが出来ると思われる。

 G-SOXを機に、地方自治体の「現場レベルでの構造改革」が進むことを期待したい。

「地方公共団体における内部統制のあり方に関する研究会」 における中間報告(論点整理)
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