クローズアップテーマ
4-4.先進的な保健事業の取り組み~マーケティングを重視した戦略立案~
2007年09月06日
特定健診・保健指導を効果的に推進するためには、科学的根拠に基づいた効果が実証されている保健手法を導入することが重要だ。特定健診・保健指導の義務化に先立ち、当社では医療保険者の動向・アウトソーサーに対するニーズを調査した。今回は他健保組合と比較して被扶養者への取り組みに熱心な小松製作所健康保険組合(以下、コマツ健保)をモデルケースとして今後の保健事業を考える。コマツ健保では、予ねてから被保険者に対して実施し成果を上げていた仕組みを今春から新たに被扶養者まで広げ展開されている。
コマツ健保の保健手法の優れた点は次の3点である。
・アウトソーサーを有効に活用して問診から健診、保健指導までのシームレスなサービス提供体制を整備
・健康度合いに応じて独自にセグメント分けを行い、対象者に対してピンポイントで効果的な保健事業を提供
・地域の特産品など主婦が好むインセンティブを付与するなど遊び心を取り入れ、楽しくて継続してもらえるよう工夫
コマツ健保は、被保険者数22,829人、被扶養者数29,848人(平成19年1月31日時点)からなり、保険料率が6.7%(調整保険料率を含む)と他健保と比較して低水準で推移している。コマツゆうゆうシステムの概要は以下の通りである。
【コマツゆうゆうシステムの概要(図表参照)】
※なおコマツゆうゆうシステムの概略図は、ヒアリングを通じて提供していただいたものを掲載しております。 |
コマツ健保は、「家庭全員の健康管理に注力することが、長い目で見ると企業の生産性の向上に寄与する」との理念から、保健事業にこそ力を入れるべきだと考えている。そこで社員参加型の取り組みを企画し、組織全体でやる気を惹起するとともに、マーケティングの発想に立って個別セグメントごとに効果的な保健事業手法を開発してきた。
今回、同システムを提供し主婦に対する健康意識を高めた結果、家族全体で健康診断をはじめ保健事業に対して関心が持たれるようになり、被保険者の健康意識にも変化が出てくるなど効果が出始めているという。
被扶養者の健康管理は、日常的に会社との繋がりがある被保険者と異なった視点で取り組むことが求められ、今後保健事業には顧客志向の商品開発ならびにプロモーションが一層重要になる。
従業員の心身の健康状況を改善し、もって生産性を上げる戦略的な保健予防プランを作成するため、ワークライフバランスにも踏み込み、従業員の生活水準の向上と企業業績のバランスを取る戦略が各医療保険者に求められている(第一回「戦略的保健予防プラン」より)。
投資対効果が高い科学的根拠に基づいたサービスを選んでもらえるよう、より一層マーケティングを重視した保健事業の戦略立案が求められる。