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「黒ブーム」に見る「トレンド」の生まれ方

2007年12月27日 齊木乃里子


 「トレンド」という言葉があります。アパレルの世界では、パリやミラノ、ニューヨーク、東京などで年に2回行われる「コレクション」の場で発表されたトレンドが、全世界の流行を決定付ける役割を担っていることが多く、2007年もそれを受けて、女性の間では「レギンス」がヒット商品となり、「レイヤード」と呼ばれる重ね着ファッションが街を席巻しました。これらの流行は、世界の世相を反映しているといわれています。たとえば、「世界的に紛争や天災などが多いと、平和や希望を求めることから、花柄が好まれる」といったフレーズを耳にされたことがあるでしょう。
 これまで、「トレンドカラー」も同様の流れの中で決定つけられてきました。常に流行に対し、敏感であるとともに、発信源となっているアパレルとその周辺の業界が、大きな影響を及ぼしてきたわけです。しかし、2007年後半に広がった「黒ブーム」は、この流れとは少し違った様相を呈していたようです。
 そもそも「黒」というカラーは、ファッション業界では、景気循環の中で数年に1回は必ず流行るといわれている色の1つです。また、何年にもわたって同じ型でつくられる洋服の品揃えの中には、ほとんど「黒」が含まれており、定番化しています。しかし、2007年の「黒ブーム」の担い手として、報道された商品は、アパレルではありませんでした。それは、「納豆」「はるさめ」「バウムクーヘン」といった食品、「綿棒」「まな板」「トイレットペーパー」などの日用雑貨品だったのです。
 それでは、この黒ブームはどこから始まったのでしょうか。
 実は、食品の世界では、健康食品のブームと共に、数年前から、「黒い食品が、健康によい」というイメージが広がりつつありました。黒ゴマ、黒米、黒酢、黒豆といった黒い食品に含まれるアントシアニンという抗酸化成分が体によいということが、マスコミを通じて知られるようになっていたからです。中でも、2003年に発売されたハウス食品の「黒豆ココア」は、この流れの中で初年度大ヒットを記録した商品です。この商品は、特定保健用食品でなかったため、単に「健康オタク」である人たちにとどまらず、「特に気になる病気があるわけでもないけれど、手軽に健康になりたい」という多くの人たちに受け入れられました。
 この商品のヒット以降、「黒」という色を「口に入れる」ということに対する抵抗感が薄れ、逆に「黒=健康」というイメージが完全に定着しました。その後、多くの食品で「黒」がキーワードとなり、パッケージやCMでも黒が訴求されるようになりました。
 一方で、まな板や綿棒といった日用雑貨で「黒」が用いられるようになったきっかけは、もっと実用的なところにあります。まな板は、色弱の人たちが白い食品を調理する際にケガをしないようにと開発されましたし、綿棒は汚れが目立つというところからヒットしました。
 このように「黒=健康」と「黒=役立つ」という流れが合流して、「黒」の良いイメージが定着するようになりました。この流れの中で、そもそも黒が持っている「上品」「高級」「スタイリッシュ」といったイメージが強められる結果となったのです。近頃では、「プレミアム」と銘打った商品のパッケージやCMの背景はほとんど黒ですし、これまで「黒はご法度」とされていたウエディングドレスやベビーウエアまで黒が登場するなど、アパレル業界へのフィードバック現象が起こっています。
 2007年の秋は、報道の面でも、「黒ブーム」一色でした。テレビやラジオのニュース、新聞紙面を何度となくにぎわし、おなじ商品が何度も紹介されることとなりました。このような一連の報道が、さらにブームを後押しする結果となったことはいうまでもありません。
 2008年は、何がヒットするのでしょうか。
「黒ブーム」の事例からわかるように、次の爆発的ヒットにつながるテーマが、すでに何年にもわたって、水面下で芽をふきつつあるかもしれません。何に着目しましょうか。どんな視点でマーケットをみましょうか。
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