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「デザイン」と「スポーツ」が大学の「ブランド戦略」を加速させる

2008年02月25日 宮田雅之


少子化の中、大学の学生獲得競争は激化しています。「全入時代」にあっては、主導権は大学側ではなく学生側にあると言えます。生き残りをかけた大学の差別化戦略が求められています。

大学に関する情報収集チャネルは限られている

大学の魅力は「質の高い授業」「優秀な教授陣」「就職実績」など様々です。しかし、外部の人間が入手できる情報には限りがあります。特に、教育内容については、入学して授業を受けてみないと実情は分かりません。

では、受験生や保護者は、何を基準に志望校を選択するのでしょうか。今や国立大学の初年度納入金は80万円に上り、学費の高低だけで大学選びを行うケースは減少していると思われます。東京など都市部では、同じエリア内に同じような偏差値の大学が複数存在しており、受験生は幅広い選択肢の中から志望校を決めなくてはなりません。

大学の「イメージ」が志望校選択に影響

筆者個人の感覚では、大学を「イメージ」で決める人は少なくないと思います。名前を聞いただけで「校風」や「学生生活」が何となく「イメージ」できる有名大学は、志望校に挙げられる可能性は比較的高い一方、「イメージ」が世に浸透していない大学は、なかなか選択肢にすら挙げてもらえません。

大学が競争に勝ち抜いて行く上で、受験生に良い「イメージ」を頭に浮かべてもらえるような仕掛け・工夫が必要です。つまり、「ブランド戦略」が重要性を増しています。しかし、大学が持っている魅力が受験生に十分に伝わっていない事例は少なくないと思います。受験生や保護者の目線に立って情報発信のあり方を見直すことは、今後の重要なテーマの一つです。

求められる「ブランド戦略」の視点

大学改革のユニークな事例として、明治学院大学(以下、明学)が様々なメディアで取り上げられています。「明学ブランディングプロジェクト」に、人気のアートディレクター佐藤可士和氏を起用。ロゴマークやスクールカラーなど「デザイン」のリニューアルを行いました。教育理念(Do for Others)や創設者(宣教師ヘボン)を分かりやすく紹介する小冊子を作るなど、「ブランド・ストーリー」の整理もあわせて行い、単なるビジュアル改善プロジェクトとは一線を画した取り組みを進めています。

明学の新しいロゴマーク
明学の新しいロゴマーク

佐藤可士和氏のデザインした明学グッズの数々
佐藤可士和氏のデザインした明学グッズの数々

制服が可愛い高校に憧れる中学生が少なくないことからも、「デザイン」が学校の魅力作りに及ぼす影響は少なくないと思います。その一方で、「デザイン」だけでは限界があるのも事実です。「ブランド戦略」を次の段階に進めるためには、「デザイン」も活かしながら、大学の内と外が日常的にコミュニケーションを交わせる「場(プラットフォーム)」を設けることが必要であると思います。

そこで筆者からの提案。アメリカの大学に習い、以下の2つのプロジェクトを「ブランド戦略」の促進策として検討してみては如何でしょうか。

(PJ1) カッコ良い「デザイン」のカレッジグッズを、オープンに販売する

日本では大学のロゴの入った洋服を着ている学生をキャンパス内で見かけることは殆どありませんが、アメリカではごく当り前の風景です。アメリカのカレッジグッズは「デザイン」に優れたものが数多く、品揃えも豊富です。単にカッコ良いだけではなく、その大学の歴史を感じさせる「デザイン」になっている点も感心させられます。ショップは、外部に対してオープンで、筆者自身、旅の土産として購入したこともあります。

同じロゴが入った服を着ていると、何となく親近感が沸いてくるものです。そこで、オシャレなファッションアイテムとして大学関係者以外の人にも着てもらえるようなプロジェクトを立ち上げてみては如何でしょうか。大学周辺の小売店でも販売していただけるようにすると、地域との交流が深まるかもしれません。

(PJ2) 「スポーツ」で日常の中に地元住民とのコミュニケーションの場を作る

アメリカでは、大学のアメリカンフットボール大会(カレッジフットボール)が、大学関係者だけではなく、地元住民の大きな関心事になっています。日本の高校野球と状況は似ているかもしれません。

スポーツの「感動」は、知らない者同士の心を瞬時に一つにしてしまう程のパワーがあります。しかし、大学スポーツが学生と地元住民の交流の場になっている事例は、日本では殆ど見られません。少なくとも、地元住民が大学体育会を応援している姿を、筆者自身見たことがありません。

そこで、カレッジスポーツを、大学のコミュニケーション戦略の核に位置付け、地元住民と感動を共有できる「場」を整えるプロジェクトを立ち上げてみては如何でしょうか。大学新聞部や地元メディアと連携すると、情報発信力の強化につながるかもしれません。

【参考サイト】
■IVY SPORT(アイビーリーグのグッズをネット販売するサイト)
  http://www.ivysport.com/
■College Sports Direct(カレッジスポーツのポータルサイト)
  http://www.collegesportsdirect.com/
■Go Crimson(ハーバード大学のスポーツ活動を紹介するサイト)
  http://www.gocrimson.com/

※当レポートは執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。
※当レポートに掲載されている写真は、資料用に研究員個人が撮影したものです。
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