コンサルティングサービス
経営コラム
経済・政策レポート
会社情報

経営コラム

クローズアップテーマ

「CO2は大気汚染物質?」米国環境保護庁のレポートを考える

2009年04月23日 佐々木努


 米国では、工場や自動車から発生する大気汚染物質を規制する法律として、大気浄化法(CAA:Clean Air Act)が存在する。この法律を巡って、「地球温暖化の原因となる温室効果ガスは住民の健康を害する可能性があるため、大気浄化法によって自動車などからの排出をEPAが規制すべき」とマサチューセッツ州などが米国環境保護庁(EPA)を訴えるなど、地球温暖化の面でも注目されている法律でもある。

 上記の訴えについては、2007年4月に米国最高裁が「温室効果ガスは人の健康や福祉を脅かす大気汚染物質とEPAが判断すれば、大気浄化法によって規制できる」との判決を下し、温室効果ガスを大気汚染物質として規制するようEPAを事実上促している。当時、この判決は大きな波紋を呼んだ。

 こうした背景を受けて、先週の4月17日にEPAは次のような見解をまとめたレポートを公表した。
「温室効果ガスは地球温暖化を促進し、熱波や洪水を増加させる原因であり、人々の健康と福祉にとって有害である」
 つまり、大気浄化法によって工場や自動車などから排出される温室効果ガスを規制できることが認められたということになる。

 今後は、規制内容の検討などに関心の中心は移っていくだろうが、ここで注目すべきは、温室効果ガスが健康に有害であると認めたことにある。地球温暖化問題への対応の足並みが揃わないのは、その影響を「実感」できないからではないか。大気汚染や水質汚染の原因物質のように、健康を害することが明白な場合には、厳しい規制への異論は極めて少ない。一方で、温室効果ガスの場合には、影響の顕在化に10数年かかったり、影響について不明な部分も存在することから、規制に対する切迫感がない。

 大気中に一定量存在するCO2を「大気汚染物質」と言うのは語弊があるが、大気汚染問題として議論すべき汚染物質であるとした今回のレポートは、温暖化防止に向けた議論に切迫感を持たせるきっかけになるだろう。
経営コラム
経営コラム一覧
オピニオン
日本総研ニュースレター
先端技術リサーチ
カテゴリー別

業務別

産業別


YouTube

レポートに関する
お問い合わせ