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中期目標の検討は折り返し地点へ

2009年02月19日 三木優


 約1ヶ月前のコラムにて日本の温室効果ガス削減目標が検討中である事をご紹介した。現状は、中期目標検討委員会の上位組織に当たる「地球温暖化問題に関する懇談会」へモデル分析結果が報告され、以下の4つの選択肢から中期目標を決めていく事が示された。


1.なりゆきシナリオ:既存技術の延長線上で機器・設備の効率が改善し、耐用年数を迎えた時点で機器等の入れ替わりが進むケース(1990年比+6%)

2.外国と同じぐらいは努力シナリオ:諸外国が発表している中期目標と限界削減費用が同等となるケース(EU-20%と同等=1990年比±0%~+7%・米±0%と同等=1990年比-2%~+7%)

3.出来る事はがんばろうシナリオ:強制的な手法によらず実現可能な最先端技術の最大導入ケース(1990年比-4%)

4.あるべき論シナリオ:先進国全体の温室効果ガス削減率が1990年比-25%であって、先進各国が等しく削減努力を行うケース
 ○ 限界削減費用が均等(1990年比-12%~-1%)
 ○ GDP当たりの対策費用が均等(1990年比-17%~-16%)
 ○ 日本の削減率も1990年比-25%(1990年比-25%)


 これらの選択肢はいずれも森林吸収源や京都クレジット利用を除いた「正味」の削減目標である。京都議定書の第一約束期間における日本の目標は、1990年比-6%だが、「正味」の目標に換算するとおおよそ1990年比+4.4%程度であり、ある程度の経済成長を前提とすれば、1.のシナリオがまさに「なりゆき」である。
 筆者は、現状から出来るだけの事をする3.のシナリオが、国内的には説明がつきやすい事と森林吸収源・京都クレジットを含めれば、-10~15%程度の削減となるので、国際的にも一定の努力をしている事をアピールできる事から、中期目標に相応しいと考えている。

 今後の中期目標検討スケジュールは、2月中に関係者ヒアリングを行うとしており、その後の中期目標検討委員会での議論を経て、順調にいけば3月末頃には中間報告がとりまとめられると見込まれる。
 中間報告では、中期目標と一緒にそれを実現することによる、「費用と便益」も示される予定である。中期目標検討委員会がどのような中期目標=目指す社会を選択し、その費用と便益が誰にどのような形で「配分」されるかについて、どこまで具体的に示せるのかが、中期目標の妥当性を国民が考える上で非常に重要である。中期目標検討委員会には、是非とも中期目標を「見える化」して頂きたいと思う。
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