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家庭用燃料電池:エネファームは売れるか

2009年02月02日 青山光彦


 1月29日の日経新聞のほか各メディアでこぞってとりあげられていましたが、とうとう、都市ガス及びLPGの大手六社が2009年度に家庭用燃料電池を一般販売する、と発表されました。
 記事によれば、一台の販売価格が320万円強であり、政府による補助金の上限額140万円をそのまま適用した場合、家庭での負担は180万円強となります。また、導入家庭には割安なガス価格設定により年間光熱費が5~6万円安くなるとのことです。単純計算しても投資回収年数は30年以上かかることになります。

 そもそも、この「エネファーム」は、ガスから水素を取り出し、化学反応によって発電及びその排熱を給湯などに利用するコジェネレーションの一種であり、オール電化が進む住宅業界においてガス業界の巻き返しを図るための「切り札」といえるものです。
 はたして、このエネファームは本当に「切り札」となりうるでしょうか。

 検証にあたっては、基本的なマーケティングミックスの分類としての4P(価格、製品、プロモーション、流通)の視点から考えてみました。
 
【価格】
 上述のとおり現在では高価格であり、給湯器として価格競争力のある価格帯である50~60万円までには程遠く、価格の高さは、購買の大きな阻害要因となりえます。また、現時点では補助金ありきのものと言え、実際の購入価格は補助金の幅と適用期間に大きく依存します。

【製品】
 「エネファーム」=ENE(エネルギー)+FAEM(農場)の造語で、統一ブランド名称として浸透を図るとともに、ロゴマークによりイメージ戦略を進めています。
 また、マイホーム発電により一次エネルギーロスが少なく発電が可能で省エネ・省CO2が可能です。ただし、発電電力は優先的に使用され、売電はできません。また、現在は、定格出力が1kWのものが主流であり、エコウィルに比べ発電効率は高いものの、床面積150m2程度の戸建4人世帯に必要な電力を、商用電力の購入なしに独立でまかなうことはできません。また、大型の貯湯ユニットや燃料電池ユニットを屋外に設置する必要があるため、既存の集合住宅等には不向きです。このため、当面のターゲットは、新築戸建住宅あるいは既存リフォーム戸建住宅が中心となります。

【プロモーション】
 現時点では、発売の発表をしたのみであり、具体的な販促活動はおそらく行っていないと思われます。ガス会社のホームページでその環境性、経済性などが謳われておりPR活動が行われている程度です。また、戸建住宅向けでは、太陽光発電とエネファームとの組み合わせによる「ダブル発電」の可能性も考えられ、光熱費削減に十分寄与します。国では、1月13日から太陽光発電の補助(kWあたり7万円)を開始しており、W発電の導入が加速する可能性も考えられます。いずれにしても、販促活動の具体策、PR方策など今後が期待されます。

【流通】
 現時点では、どのようなチャネルで具体的に販売を進めていくのか明らかではありませんが、初年度においては、ガス会社1社あたりは1,000台販売が目標値であり、限界値でもある、と聞いています(アフターフォローの体制面などがネック)。そもそも、サービスショップなどで機器単体を売るのか、新築戸建住宅への組み込みのためにサブユーザーにプッシュするのか、あるいは既存戸建住宅のリフォームの際の個別メニュー、あるいはパッケージ商材となるのか、今後のガス会社の戦略によっては、導入が加速される可能性も十分考えられます。


 以上により、現時点では、価格面、機器設置面などからターゲットはごく一部に限られそうで、その層にいかに販促をかけていくか、またその売り方としてどういったチャネルでどのような売り方をするのか、という点が工夫のしどころ、と考えられます。
 価格については、今後の量産の進展や、製材資源の代替品の開発等によるブレイクスルーなどがきっかけで価格低下が起こる可能性があります。太陽光発電システム設置単価も1995年から2005年の10年で170万円/kWから66万円/kWにまで低下しており、今後の家庭用燃料電池の販売動向について注目したいと思います。
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