コンサルティングサービス
経営コラム
経済・政策レポート
会社情報

経営コラム

クローズアップテーマ

ロシア・欧州におけるガス供給問題と温暖化

2009年01月13日 佐々木努


 ロシア産の天然ガスの供給停止問題は、報道によると欧州向け供給は再開されるようだ。この問題は「エネルギー安全保障」の観点から論じられていることが多いが、本コラムでは「温暖化」の観点から考えてみたい。

 欧州ではパイプラインによって国境を越えて天然ガスが供給されており、ガス市場は自由化されている。また、電力も同様に自由化されており、市場における電力取引も盛んである。

 荒っぽく言えば、電気もガスも「欲しい量を買いたいところから買うことが出来る」仕組みである。したがって、価格競争力のある供給事業者がいれば、そこに買い注文が集まることとなる。天然ガスに関して言えば、ロシア産は中東産と違って港湾施設など必要とせず、パイプラインで常時供給可能なことなど様々な要因からロシア産への依存割合が高まっていた。

 こうしたロシア産天然ガスに依存する状態は、エネルギー安全保障上問題である。そのため、欧州連合はこれまでも、電力やガスの安定供給に向けて加盟国のエネルギー供給網の相互接続により、調達先の多様化の確保や加盟国間のガスなどを融通利用を行える体制の整備を進めてきた。

 一方、欧州は再生可能エネルギーの利用割合を2020年に20%にする目標を掲げている。これは地球温暖化対策の一つであるが、エネルギー安全保障問題とも関係している。国内あるいは域内で調達可能な再生可能エネルギーの割合を増すことによって、エネルギーセキュリティーを高めることが可能であるからだ。

 欧州において再生可能エネルギー政策が革新的に映るのは、温暖化対策だけが目的ではなく、より「実利」に近いエネルギー安全保障の問題が根底にあるからではないだろうか。企業において、温暖化対策だけを目的とする施策が実施されることもあるだろうが、規模が小さかったり、予算や取り組み意識の問題から進捗が芳しくなかったりするものが多いだろう。温暖化対策を進める上では、「実利」とともに推進できるような方向性や仕組みを工夫しなければならないのではないだろうか。
経営コラム
経営コラム一覧
オピニオン
日本総研ニュースレター
先端技術リサーチ
カテゴリー別

業務別

産業別


YouTube

レポートに関する
お問い合わせ