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オバマ新大統領が変える米国の地球温暖化対策

2008年11月06日 三木優


 世界中が注目した米国大統領選挙は、オバマ氏がマケイン氏の2倍の選挙人を獲得し、黒人初の米国大統領になる事となった。予備選挙の段階から世界中の関心を集め、最近では、サブプライム問題に関連して、経済政策の面からも注目を集めていた米国大統領選挙は、地球温暖化問題においても非常に重要なイベントであった。

 周知の通り、米国はブッシュ大統領の就任により、京都議定書から離脱し、地球温暖化防止のための国連(UNFCCC)スキームからは一定の距離を取り続けてきた。この8年間は、京都議定書が発効する一方、中国・インドの急激な経済発展を背景に、世界の温室効果ガス排出量は増加を続け、2007年に公表されたIPCCの第4次報告書では、世界の危機的な状況が豊富なデータにより示され、改めて、世界は「地球温暖化」と言う人類全体に及ぶ脅威を認識することとなった。

 政界中が京都議定書への復帰を働きかけてきたものの、米国は中国・インドなどの温室効果ガス排出量の多い途上国が排出制限を受けないのであれば、自国も同様に排出制限を受け入れないと言う態度を変えず、京都議定書を無視する形でUNFCCCの枠組み外で、自国に有利なスキームを作ろうとしてきた。その結果として、EUと日本が京都議定書に基づいた義務履行をまじめにやっているにも関わらず、そのカバレッジは3割程度となり、京都議定書の実効性に対する疑問・不信や2013年以降の枠組みに関する議論の迷走につながってしまったと考えられる。

 このような状況において、地球温暖化対策に積極的な態度を示しているオバマ新大統領の就任は、大きな転換期になると考えられる。オバマ新大統領は、義務的な排出権取引制度により、米国の温室効果ガス排出量を2050年までに大幅に削減する「ムチ」を支持する一方、地球温暖化に対応した産業を育成するとにより、新たに500万人の雇用を生み出す「アメ」についても言及している。いずれも大統領が交代する来年の1月以降に具体的な政策が見えてくると思われるが、ブッシュ大統領とは正反対の指導者が米国に現れることにより、UNFCCCにおいて議論されている、2013年以降の枠組みについても大きく動き出すことが予想される。

 2013年以降の枠組みは、2009年末までに決まることになっており、来年の1年間は日本の産業界にとってもUNFCCCにおける議論については、しっかりと情報収集することをお勧めする。
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