コンサルティングサービス
経営コラム
経済・政策レポート
会社情報

経営コラム

クローズアップテーマ

日本は温暖化対策の先進国なのか

2008年09月26日 佐々木努


 先日、業務でシンガポールに出張した。同国におけるCDMプロジェクトの現地視察とステークホルダーズミーティングに出席するためである。ステークホルダーズミーティングとは、CDMプロジェクトを実現するためのプロセスにおける公式イベントの1つであり、プロジェクト実施者が、政府関係者、周辺企業・住民、学識経験者、NGO、などに対してプロジェクトの概要と意義を説明するものだ。幸いなことに、我々のプロジェクトへの評価は高く、多くの方々から賛同を得られたので、ミーティングとしては成功だった。

 さて、「シンガポールは先進国なのにCDM?」と思われる方も多いのではないか。CDMとは途上国で実施されるものであるから、実際に何度かそのような質問を受けたことがある。京都議定書では、シンガポールは「非附属書I国」(即ち、途上国)と定められているので、CDMのホスト国としての資格を有している。UNEPが公表しているCDMプロジェクトリスト(開発中のものも含む)において、4件のプロジェクトがシンガポールにおいて掲載されており、れっきとした「途上国」なのである。

 それでも「途上国」として語るには大変失礼な部分もたくさん存在する。空港に到着してからホテルに至るまでの街並みはとても近代的で整然としていて美しく、とても「途上国」とは思えない。道路脇には植樹が進んでいるし、緑化にも力を入れている。自動車の登録に必要な車両購入証の発行を制限して自動車の総量規制を実施していたり、中心街などに設けられている電子式道路通行料金徴収システム(ERP)によって通行量を抑制をしていたりもする。地下鉄やタクシーなどの公共交通の料金も低く抑えられている。温暖化対策の政策を見る限り「先進国」と言えるのではないか。

 日本は「附属書I国」であるから先進国である。冒頭の我々が関わっているCDMプロジェクトも日本の技術を利用したものだ。日本の技術は、環境性能・省エネ性能が高く、先進国として世界に地球温暖化対策に貢献しているし、これからも貢献できるように思う。では、温暖化対策の政策面において、日本は「先進国」と言えるのだろうか。残念ながら、とても「先進国」だとは言えない。今秋から試行的な排出量取引制度が始まる。賛否両論色々存在するが、政策面から日本を温暖化対策の先進国となるような、実りある試行になってほしいと強く思う。
経営コラム
経営コラム一覧
オピニオン
日本総研ニュースレター
先端技術リサーチ
カテゴリー別

業務別

産業別


YouTube

レポートに関する
お問い合わせ