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セクター別アプローチ

2008年08月28日 佐々木努


 ポスト京都の枠組みの議論において「セクター別アプローチ」という単語を見聞きする機会が多いのではないだろうか。温暖化の世界での「公用語」になりつつあるように思うが、様々な意味で使われているので正確に理解するには注意が必要だ。

 そこで、まず「セクター別アプローチ」の用法について確認したい。分類すると次のようになる。
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(1)途上国の特定セクターに排出削減のコミットメントを課す提案
(2)先進国も途上国も国別総量目標は持たずに、業界団体などが各国各セクターの自主的削減目標を管理するような国際的枠組みを構築すべきという提案
(3)先進国間の削減目標を考える際に、差異化基準のひとつである効率性をより重視すべきという提案
(4)国別総量目標を定める場合に、各セクターの削減量を積みあげて計算すべきという提案
(上記の分類については、東北大学の明日香教授のウェブサイト(http://www.cir.tohoku.ac.jp/~asuka/)から引用、一部修正した)
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 それぞれ意味が全く異なることがよく分かるだろう。では、これを踏まえて本題に入りたい。

 最近、この「セクター別アプローチ」について企業の方の意見を聞く機会が何度かあったが、やはり人によって使い方が様々であった。(4)の話をしていたかと思うと、いつの間にか(2)の話を議論していたり、(3)の話の最終的な結論が(1)であったり、といった具合だ。

 こうした混乱の原因は、上述したような言葉の使い方の差異だけにあるのだろうか。表面上の原因はそうかもしれないが、「セクター別アプローチ」の先に想定する世界の相違に起因しているとは言えないだろうか。温暖化対策が厳しくなると業績が著しく悪化する企業もあるし、途上国への技術移転に伴う国際競争力の低下を恐れる企業もある。それとは逆に、厳しい規制下のもとで自社製品の価値が高まり、販売促進につながるチャンスとみる企業もある。想定する世界が違うのだから、それに向けたアプローチ方法に期待する役割が異なるのは当然である。

 同じことが国際交渉にも言える。国際交渉において「セクター別アプローチ」のウケが悪いのは、単に言葉の使い方の差異が生む誤解だけが原因ではないだろう。結局は、各国政府が想定する温暖化の世界観の違いに起因しているのだ。

 現在、ガーナで行われているCOPの国際交渉においては、微細な手法論に陥ることなく、真に温暖化対策に寄与する枠組みの構築に向けた交渉が行われることを願うばかりだ。
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