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ガソリン消費量の減少とGMの苦境

2008年08月13日 三木優


 米国エネルギー情報局(EIA)が8/12に公表した、2008年1~6月における1日あたりのガソリン消費量は、前年同時期と比較して、80万バレル(12.7万kl)の減少となり、26年ぶりの落ち込みとなった。米国の2007年における1日あたりのガソリン消費量は、929万バレル(147.7万kl)であり、8.6%の減少となっている。世界全体でも130万バレルの落ち込みとなっているが、世界のガソリン消費の1/3を占める米国での落ち込みが顕著であった。

 EIAは、このような大幅なガソリン消費量の減少は、景気の減退と原油価格の高騰が理由であると分析しており、米国の消費者の行動が景気と原油価格により大きく変動した結果と考えられる。具体的には、サブプライム問題を発端として景気の見通しが不透明になり、そこに過去に例のない水準まで原油価格が上昇した事により、さすがの米国人においても生活防衛のために、ガソリン消費量を減らしたと考えられる。

 この26年ぶりのガソリン消費量減少による影響を最も受けたのはGMである。GMはSUVやピックアップトラックなど、これまで米国人に人気のあった車種を多く生産してきた。これらの車は、いわゆる燃費の悪い車であったため、生活防衛に走った米国人の買い控え・乗り換えが一気に進み、2008年第2・四半期決算において155億ドルの大幅な赤字を計上することなった。この様な大赤字を計上した背景には、2008年に入るまでは、原油価格が上昇してもガソリン消費量は減少していなかったため、GMはここまでの影響があるとは予測していなかった事が考えられる。

 この米国におけるガソリン消費量の減少とGMの苦境は何を意味しているのだろうか。

 最も端的に言える事は、急激かつ大幅なエネルギー価格の上昇は、エネルギー消費量を抑制する効果がありそうだ、という事である。じわじわと上昇していく局面では、消費は減少してこなかったが、2008年に入ってからの異常とも言える原油価格の上昇は、ついに価格シグナルとして消費者に届いた様である。

 二つ目に言える事は、エネルギー価格に影響を受ける業種の事業環境は、短期間に大きく変化する可能性が示された、という事である。GMにしても、トヨタのプリウスが売れている事は認識していたし、米国の消費者の好みも小型車へ広がりつつある事も認識していたが、ここまで米国の消費者の行動が変化する事は予期していなかったと思われる。

 三つ目に言える事は、環境税や排出課徴金など、エネルギー価格にCO2排出量に応じた税金・課金を課す事により、エネルギー消費量の抑制と行動変容のインセンティブを与える事が出来そうだ、という事である。これまで税金などにより、エネルギー価格を高めにすることでエネルギー消費量を抑制するという施策は、「効果がない」という意見に反論出来ずにいた。しかし、この半年の異常な原油価格の高騰により、大幅に上昇させれば効果が見込まれるし、低燃費自動車の売れ行きが好調であった事は、政策をサポートする事業者の取り組みがあれば、更に効果的になる事が実証的に示されたと言える。

 表面的には「地球温暖化の防止」とは全く繋がっていない今回の出来事ではあるが、低炭素社会を作っていく上では、示唆の多い出来事といえる。夏休み明けの頭の体操として、世界が低炭素社会に向かう事を前提に、GMと同じ運命をたどらないために、自社が今すべきことを考えてみては如何だろうか。
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