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「1200万トンの排出権を取得」の意味を考える

2008年04月14日 佐々木努


「日本の政府や企業が取得した排出枠が2007年末時点で約1,200万t-CO2である」との報道があった。本コラムでは、この数字の見方について簡単に論じてみたい。

排出権は、発行手続き上、大きく二つに分類することができる。
一つは、国連が承認したプロジェクトにおいて温室効果ガス削減事業を実施し、その削減量が国連に認められた発行済みの排出権(=「現物の排出権」)である。
もう一つは、プロジェクトが組成段階や建設中、国連による発行待ちなど、見込み段階の排出権(=「先物の排出権」)である。

上記の1,200万t-CO2とは、「現物の排出権」を表している。では、報道にあった1,200万t-CO2という数字を、「現物」と「先物」の両面から論じてみたい。

<視点1:「現物の排出権」>
2007年末時点で国連が発行した排出権は、約1億188万t-CO2であった(UNFCCC資料より)。したがって、日本政府・企業が獲得できた排出権は全世界の約12%ということになる。逆の見方をすると、残りの88%分の排出権は欧州が保有していることになる。(実際にはその他にも、途上国が売却せずに保有していることもある)
この数字は、排出権ビジネスの中心が欧州にあることを示しており、日本の存在感は非常に小さいと言える。

<視点2:「先物の排出権」>
2008年3月現在、世界で開発中の全CDMプロジェクトの削減予定総量は、2012年末までに約25億t-CO2を見込んでいる(UNEP資料より)。これは現在の世界にある「現物の排出権」の約25倍、日本が取得した「現物の排出権」の約200倍の量である。
この数字は、排出権ビジネスは今後、今以上にその存在感を増してくることを表している。
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