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コラム「研究員のココロ」

教育産業ソリューションシリーズ(第7回: 2009年度からの中期展望)

2009年03月30日 野尻剛


本シリーズでは成長戦略クラスターが取り組んでいる、学習塾をはじめとする教育産業向けのソリューションについてテーマ別にご紹介しております。詳細につきましては当クラスターまでお問い合わせください。

忍び寄る価格破壊

 100年に1度の大不況だそうだ。そうだというのは、筆者は100年も生きていないので、そう言われても正直ピンとこないからである。とは言え、輸出産業を中心に企業業績は冷え込み、個人の財布の紐は以前にも増して固くなっている。クライアントからも、将来の明るい見通しの話は殆ど出てこない。確かに深刻な不況である。

 教育支出はこれまで、医療費に次いで景気の波に左右されにくい分野とされてきた。しかし、少子化という長期構造的な要因に加え、この不況である。教育支出だけは例外と考える方が無理というものである。実際、大手学習塾チェーンで授業料の値下げが相次いでいる。分かりやすく授業料や教材費の定価段階から大幅値下げをしているところから、成績保証制度という形式で一定の成績向上が認められなければ、今後の授業料を免除するといったところまで、内容は様々であるが確実に価格破壊の動きが起きている。
 このことは統計データからも読み取れる。塾・予備校の市場規模はここ数年微減を続けているが、個別指導塾に限ると集団指導塾からパイを奪う形で、年平均3~4%の成長を続けてきた。しかし、ある予測に拠れば、2008年度の個別指導塾の市場は前年度比0.3%増と急激に失速している。これは、先に挙げたような価格下落の影響や、基本となる授業料や教材費以外のオプション的な支出を顧客が選択しなくなったことによる客単価の下落に因るものと考えられる。

大手学習塾チェーンの戦略

 こうした逆風下においても、個別指導塾を中心とする大手学習塾チェーンの足元の業績は堅調で、今後の動きも活発だ。今年の4月から、ゆとり教育からの転換が一部前倒しで始まる。授業時間が増えるだけでなく、教科書のページ数も増えて自習に適した内容に変更される。これにより集団授業についていけない子供たちが個別指導塾に流れてくるビジネスチャンスと判断し、各社ともに積極的な新規開校を計画している。
 また、現在の事業基盤だけでは成長余地に乏しいと判断して、首都圏を中心に展開してきた企業が関西圏や九州圏に進出する等の新たな地域開拓を模索する動きや、幼児教育や社会人教育等の新たな年代層の取り込みによるライフタイムバリューの向上を狙った動きも広がりを見せている。こうした各社の戦略は、自前で展開する他、FC化やM&Aが併用されることが予想され、むしろ主流となることも想定される。資金力や財務体質の良し悪しによる企業の優劣が、クローズアップされていくものと考えている。

中小学習塾の戦略

 大手が積極的な展開を進めていく中、それを受ける側の地域密着型の中小学習塾は難しい判断を迫られることになるであろう。前述の通り、FC化やM&Aによる合従連衡は加速度的に進むことが予想され、その波に乗ってしまう中小学習塾も少なくないと思う。経営者として、従業員の生活を考えれば、大手の傘下に入るという決断は決して恥ずべきことではない。厳しい経営環境を乗り切る為には、ある意味で幸運が必要であり、大手への傘下入りは、お勧めの選択肢の一つである。

 しかし、それがどうしても腑に落ちないのであれば、ここは腹をくくって勝負するしかない。大手がFC化やM&Aを進めるといっても、そうしたノウハウを高いレベルで保有している企業は教育産業には少ない。実際、過去に話題となったM&Aのその後を見ても、株価低迷の煽りを受けて買収先の株式に多額の含み損が生まれてしまった事例や、相乗効果を上手く創出出来ずに減益要因になってしまった事例の方が多い。
 そうした大手のもたつきの間隙を突き、中小学習塾が生き残っていくのは決して無理な話ではなく、十分に実現可能なことである。但し、そのためには中庸では駄目であり、顧客から選択される理由を持たなければならない。例えば、大手学習塾に子供を通わせている親の中には、その完成された受験対策指導を評価しつつも、詰め込み、競争を煽るやり方に「本当に子供にとって望ましいものなのか?学問の楽しさをより実感させるべきではないのか?」という疑問を持っている方もいるであろう。こうした顧客はマイノリティーかも知れないが、中小学習塾としてターゲットになり得る顧客ではないだろうか?
 これは一例であるが、そうしたニッチなカテゴリー市場で、№1のポジションを築くことが中小学習塾の生き残り戦略の基本になるものと考える。とは言え、そう易々と見つかるものでも、手に入るものでもないのもまた事実である。変革への抵抗も起きるであろう。そうした困難を強力なリーダーシップを発揮して乗り越えていくことが、これからの中小学習塾の経営者には求められるはずである。
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