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Sohatsu Eyes

中国の環境・エネルギー事業における地方政府の役割

2009年03月03日 李建平


少し古い記事ですが、2007年1月に中国国家環保総局(現在の国家環境保護部)が82件の重大な法規違反プロジェクトを通報すると同時に、8つの地域に対し初めて「区域限批」の行政処罰措置を発令し、話題を呼んでいました。「区域限批」とは、環境関連法規違反とされる事業が徹底的に改善されるまでに、対象地域において、全ての新規プロジェクトの環境アセスメント審査許可を凍結する規制です。一見普通の行政措置に過ぎませんが、中国の地方政府の独特な役割が読み取れる意味深い出来事です。「上に政策あり、下に対策あり」の諺にもあるように、中央政府が個別の企業に下す処罰は最終的に地方政府に委ねて実施させるのですが、地方政府は地方の経済発展を優先し、環境法規を厳格に適用してないことが多々あります。地域全体に連帯責任を取らせると、地方政府は利害関係の調整や、対策を講じなければならないからです。

ある工業団地に熱供給を行っている事業者を訪ねたことがあります。民生家庭向けの供給は料金設定が低く、全く利益が出ないのですが、地方政府の要請により、その事業者が周辺の住民に熱供給を始めたそうです。当然、今後地方政府がその事業者にいろいろ便宜を与えるのに間違いありません。ある都市の環境保護局は、家電リサイクル事業を育成させるために、地域を牽引するようなモデルとして、既存事業者の中の一社に特別な優遇策を与えています。環保局の働きにより、地方政府は、管轄地域内の政府機関の廃棄OA機器を全部無料でその事業者に引き渡すとの通達まで出しています。

環境・エネルギー分野は、元々地方行政と緊密に連携する性格があるのですが、市場経済へ転換する途上とも言える中国の環境・エネルギー事業は、地方政府との関係がなおさら重要です。国の政策・規制や、事業者の財務諸表に頼るばかりで、環境・エネルギー分野の事業を評価するのはあまり適切ではありません。事業の背景に地方政府がどう関わっているかを把握し、地方政府の関わりによるメリット、デメリットを見極めることが必要です。地方政府の優遇対象事業のチャンスをつかんで、市場を占有し、事業を拡大した成功事例は少なくありません。中国進出を検討する日本企業にとって、うまく地方政府と付き合うのは避けては通れない道なのかもしれません。

写真:閉鎖のため爆破させている小型火力発電所

※eyesは執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。
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