Sohatsu Eyes カップ麺とバイオマスエネルギー 2007年10月23日 三輪泰史バイオエタノールから製造されたETBE(ガソリン添加剤)混合のバイオガソリンの販売が開始され、我が国におけるバイオマスエネルギーの活用が加速しています。アメリカやブラジルには遠く及ばないものの、一般消費者がバイオマスエネルギーを利用できるようになったという面では、画期的な出来事だといえます。一方で、カップ麺やお菓子の相次ぐ値上げがテレビを賑わしています。デフレが長かったという背景もあり、しばらくの間これらの商品の価格は横ばいでしたが、最近はこぞって値上げに動いているようです。実はこれら二つのニュースが因果関係にあるというのはご存知でしょうか。バイオエタノールは主にトウモロコシ、小麦、コメ等の穀物、サトウキビ、甜菜等の糖質原料を発酵させることで生産されます。簡単にいえば、アルコール濃度の高いお酒と同じような作り方です。ここで上記の原料に注目してみて下さい。私たちが日常食べているものばかりです。つまり食べ物由来のバイオエタノールは「食べ物をエネルギーに転換して使用する」という意味合いも含んでいるのです。ここで両ニュースの関係性がはっきりと映し出されます。温暖化対策・資源枯渇対策として導入したバイオエタノールにより、食料の需給バランスが崩れて供給量が不足した結果、小麦やトウモロコシの価格が急騰してしまったのです。同じように価格高騰の影響は家畜のエサにも現れています。バイオエタノールを始めとするバイオマスエネルギーは地球環境問題に対する有効な解決策ですが、別の側面で人間の生活に悪影響を及ぼす可能性があります。ただ、作物によってはたんぱく質を飼料に、デンプン質をバイオエタノールに、とうまく使い分けている場合もあり、単純にバイオエタノールが食料需給に悪影響があるとはいえないようです。一方で、近年、廃木材由来のバイオエタノール、廃食油由来のBDF、下水汚泥・生ごみ・家畜糞尿由来のバイオガス等、捨てられるものを有効活用した食料への影響の少ないバイオマスエネルギーも実用化されています。今後バイオマスエネルギーを普及促進する際、環境・エネルギー面と食料・飼料面のバランスを如何にうまく舵取りしていくかが重要な問題となります。このことを頭の片隅に置かれて、帰り際にコンビニエンスストアをのぞいてみて下さい。いつものカップ麺が少し違って見えるかもしれません。 ※eyesは執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。