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Sohatsu Eyes

CSRを基準にした企業選別の時代へ

2007年04月10日 佐藤浩介



先日の新聞に、わが国のメーカーがサプライヤーから部品・資材を調達する際に、特定の化学物質を使用しない「環境配慮」、あるいは、児童労働を行わないという「法令順守」などの企業の社会的責任(CSR)への取り組みを考慮するよう変わりつつある、との記事が掲載されていました。

このような行動は「CSR調達」と呼ばれています。このCSR調達でのポイントは、メーカーが、企業の社会的責任を契約に明記して拘束力を高めたうえで、指導しても改善が見られないサプライヤーからの調達を打ち切る、すなわち、メーカーはCSRの取り組みを基準にサプライヤーを選別するようになる可能性があるということです。

メーカーがこのような厳格な手法をとるに至るには、二つの背景があります。まず一つには、EUで昨年RoHS指令が施行され、メーカーが製品における適切な化学物質使用にについて全責任を負うことになったことです。しかも、欧州における環境保全規制は今後更に強まることが見込まれています。また第二には、生産委託先の工場で劣悪な労働環境が存在することが明らかになった場合、メーカーがNGOなどから激しい批判を浴びて不買運動に晒されるリスクが高まったことです。これらから、メーカー自身がサプライチェーン全体での環境保全、あるいは労働環境の整備などの経営管理を行わざるを得なくなったのです。

このような背景から、CSR調達の動きは日本国内だけでなくグローバルに広がっています。事実、いまや「世界の工場」となった中国でもCSRに対する意識が向上していますし、また、ソニー、インテルなどの電子機器メーカーは共通のCSR調達の基準を策定し、業界全体で標準化していくことを展望しています。

CSR調達の動きは間違いなくサプライチェーンのあり方、ひいては、わが国における企業取引のあり方をも変えていくでしょう。私達は引き続き、進化する企業のCSR動向調査を通じて、変貌する日本経済の構造の追いかけていきたいと考えております。

※eyesは執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。
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