コンサルティングサービス
経営コラム
経済・政策レポート
会社情報

経営コラム

Sohatsu Eyes

既存施設の運営ビジネス

2006年05月23日 宍戸朗



家庭ごみの焼却施設の整備や運営は、自治体が公共事業として行っているのが通常ですが、これを民間企業のビジネスの視点から見てみたいと思います。ここ数年、自治体のごみ焼却炉に関する事業のモデルが変わりつつあります。これまでは、プラントメーカが焼却炉の納入を行う形態が中心でしたが、最近では、長期間の契約を締結し、民間企業の創意工夫のもとで維持管理運営を行う形態(PFIやDBO、長期責任委託など)が広がっています。この背景には、公共投資が抑制され、自治体が行う新たな施設整備が減少していることがあります。実際、10年前には年間数十件の発注があったのが、この2、3年は年間10件程度に落ち込んでいます。

大手の焼却炉メーカが10社程度であることを考えると、平均して年間1、2件の受注しかできないため、メーカにとっても公共事業に依存することはリスクとなっています。そのため、新設事業から撤退したり縮小したりする企業も現れています。新たな施設整備が減少する一方で、30年を超える長期間の施設の使用が念頭に置かれるようになっています。現存する焼却炉の約2/3は、 20年以内に建設されたものであるため、今後しばらく施設の建替は少ないと考えられます。

したがって、民間企業にとっては、既存の焼却炉の維持管理運営ビジネス(既存施設の長期責任委託)が、今後の重要なテーマになると見込まれます。 一般廃棄物の中間処理は1兆円を超える規模があり、依然として大きな市場です。現状は、単年度の委託のように民間企業の創意工夫が少ない形で発注されていますが、今後は、焼却炉の維持管理運営を民間企業のノウハウを活かして効率的に行うことが求められています。

民間企業としても、こうした新たな市場での先行的な取り組み、競争力を確保していくことが重要になっています。海外では、複数の施設の運営維持管理のノウハウを持つ大企業が複数存在し、廃棄物マネジメント事業者と呼ばれています。今後、日本でも、こうした新たな事業のモデルが広がることが期待されます。

※eyesは執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。
経営コラム
経営コラム一覧
オピニオン
日本総研ニュースレター
先端技術リサーチ
カテゴリー別

業務別

産業別


YouTube

レポートに関する
お問い合わせ