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コラム「研究員のココロ」

住宅業界の再編はあるか?

2007年02月19日 坂本謙太郎


 日頃建設業界、とりわけ住宅・不動産・建材業界の案件を手がけることが多いためか、先だって某新聞社の記者に「2007年の業界再編~戸建注文住宅~」に関して取材を受けた。その際にお答えした内容をここで披露したいと思う。なお、これは業界の事業構造・市場動向を踏まえた私なりの考えであるため、投資判断等される方は、個々の企業の情報をよく確認されることをお勧めする。
 結論から申し上げると、住宅展示場にモデルハウスを連ねる住宅メーカー(戸建注文住宅業者)同士が合併するということは想像しがたい。これは以下の背景から導き出される。
 注文住宅の販売・工事請負は労働集約産業である。社員の4~5割は営業マンであるし、さらに設計士や現場監督など、顧客接点である営業所に所属する社員の人数も含めれば、8割以上の社員が顧客に接する位置にあることが多い。専門知識を持つ者が多数の顧客を手厚く遇する必要がある当業界において、社員は競争力の源泉であり、最も重要な資産だ。しかし、その数は景気変動にあわせて柔軟に変動させられるものではない。

 一方、注文住宅市場は長らく縮小傾向で推移している。野村ホーム・三井ハウスなど名の通った住宅メーカーでさえ自発的に事業撤退・会社整理に入るほどまでにパイは小さくなっている。住宅着工戸数の全体数は横ばいだが、マンション・分譲住宅が伸びている分、注文住宅は減少しているのである。
 このような事業構造と市場環境を考え合わせると、住宅メーカーの経営陣が最も頭を悩ませているのは、社員の数に見合った市場の規模がなくなっていることであるに違いない。従って、できることなら社員数を減らしたいというのが本音だろう。

 このような状況にあって、他社を買収することは何の意味もない。それは減らしたいはずの人間だけが増えることになる。工場・商品の統合などの合併効果よりが、社員数の増加による負担を上回るということは、およそ考えられない。仮にA社が3万棟、B社が1万棟販売しているとしても、その数はデザイン・特徴などが異なるからこそである。A+B社の社員が全員でA社の商品を販売したとしても、販売棟数は3万棟を大きく超えることはないだろう。住宅メーカー各社はそのくらい市場を刈り尽くしており、社員数の不足に起因する未開拓市場などはほとんど残っていない。従って、住宅メーカーのM&Aには何の意味もない。それゆえ、再編もないだろうというのが私の見立てだ。
 ではトヨタ自動車(トヨタホームを販売)が産業再生機構の傘下のミサワホームを支援したのは何だったのか、という疑問がある。これは極めて特殊な事例と言わざるを得ない。営業人員と販売チャネルの整備という長年を克服するための、本業で莫大な利益を上げているという企業ならではの決断だと考える。今後両者の関係がさらに深化するのかは、支援によってシナジーが生まれ、トヨタの住宅事業に大きなメリットが出るのかにかかっており、私も注目しているところである。いずれにしても、トヨタ同様にM&Aで販売チャネル・人を確保しなければならないハウスメーカーが他にあるとは思えず、これに類する事例が出てくるとは考えにくい。

戸建注文住宅業界の再編として、強いて想像するなら次の二つを挙げることが出来る。
 第一にグループ内の販社体制の再編・整理である。これにはパナホーム・旭化成ホームズの例がある。親会社によるグループ全体の事業再編に伴うものである。これはいわゆる業界再編ではないし、ほとんどの住宅メーカーでは既に完了している。
 第二に、まだ全国の市場を開拓しつくしていない新興企業によるものである。彼らはローコスト・ビルダーと呼ばれ、通常いわゆる住宅メーカーとは区別されるが戸建注文住宅のサプライヤーであることには違いはない。それどころか、近年急速に販売エリア・販売棟数を増やしており、戸建市場の最も活気ある部分を担っている。彼らにとっては、進出先の地域の有力ビルダーの買収はエリア拡大手段のひとつになりうる。もっとも、モデルハウスを建てて、自社の商品・手法をよく理解した社員を送り込む方がより効果的であるし、仮に実現しても未上場企業が買収対象になるだろう。

 このような考察に基づき、2007年も住宅業界は合併・再編はないと考える。多くの企業が限られたパイを奪い合う熾烈な競争が続き、その競争に経済的合理性を見出せない企業は撤退するということになるのではないだろうか。
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