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コラム「研究員のココロ」

コミュニティ・マーケティングとは(後編)
~マーケティング革新シリーズ(3)~

2005年06月06日 上田真弓


前編では、コミュニティ・マーケティングが注目されている背景として、情報源の多様化・消費者嗜好の細分化により、従来のマス媒体を中心としたプロモーションでは、消費者の購買行動への働きかけが困難となっている現状を述べた。後編ではコミュニティ・マーケティングの概要を述べる。

■「プロダクトアウト」から「マーケットイン」へ
 高度経済成長期では、新技術の開発に伴い消費者の生活を大きく変化させるような技術先行型「プロダクトアウト」商品1 が多く発売された。ほとんどの企業が「新しい技術を創出すれば売れる商品を創出することができる」という「プロダクトアウト」型の発想を採った。
 しかし、現在ではそうした技術先行型新商品の創出が従来よりはるかに困難となっている上、消費者の興味が細分化され、新しい情報や商品・サービスへの飢餓感が薄いと言われている。そのため「プロダクトアウト」型発想で行き詰まりを感じた企業は、「マーケットイン」の発想と称して「消費者を囲い込む」という目的で消費者ニーズを模索し始めた。
 だが、消費者を囲い込むためにコミュニティを作るだけでは、売れる商品やサービスを生み出し、顧客をつなぎとめることは難しい。なぜなら、これまで実施されてきた囲い込み手法は、住所や氏名のデータベースを作成するだけにとどまる。そして、このデータベースに基づいて行われる市場調査の多くが、一方的に現在の消費者ニーズを聞く「御用聞き」手法を採用しているためである。消費者は現在の目に見える事象については、答えることができるが、経験したことがない将来の潜在ニーズ(=ウォンツ)については、答えることが難しい。

■コミュニティ・マーケティングとは
 コミュニティ・マーケティングは、企業が目的とする商品開発や販売促進、顧客ロイヤリティの向上などを達成するために、企業が一方的に顧客に対して質問するだけではなく、企業と顧客、顧客と顧客の双方向コミュニケーションを行い、顧客を「ファン化」させ目的を達成しようとする点が大きな特徴である。
 ここで、双方向のコミュニケーションという点が、従来の御用聞き的な消費者市場調査の手法とは大きく異なる。すなわち企業担当者は顧客と直接対話を行い、顧客同士の対話を観察することにより、常に自社の商品やサービスに対する認識がニーズと合致しているかを確認することができ、消費者の実態の洞察におけるセンスを磨くことが可能となる。顧客側も、双方向コミュニケーションを通じて、商品開発等のプロセス・時間を共有することとなり、商品やサービス、企業に対する思い入れや理解を深めることになる。自らが開発に関わった商品であれば納得して購入し、他人にも勧めたくなる。つまりコミュニティ・マーケティングでは、企業担当者と顧客が一体となり協働作業を行い、Win-Winの関係を生み出すのだ。
 さらに、顧客側にもコミュニティに属し、継続していくためのメリットがある。主には「経済的メリット」と「精神的メリット」の2つである。前者は商品やサービスの優待があるなどの物質的なメリットであり、後者は自己に役割が与えられている、自己の考えが有益に用いられているという満足感や、自らが直接関与した商品・サービスが開発され市場に送り出されるという達成感など、精神的な充足感を得るというメリットである。
 従来顧客をつなぎとめる手段としては、経済的メリットに重きを置かれてきた。しかし新商品やサービスに対する飢餓感が薄い現代ではむしろ、精神的メリットの方を、顧客は求めているとも思われる。
 インターネットが登場して以降、これまでの顔を合わせるコミュニケーションから時空間を越えたコミュニケーションが可能となった。これにより企業と顧客とのコラボレーションも容易に進めることが可能な環境が整いつつある。
 インターネットを活用した例としては、老舗食品販売会社のものがある。同社では会員に限定した料理教室を開催し、参加した会員の感動体験を掲示板で報告し、参加できなかった会員の参加意識を高めると同時に、コミュニケーションを行うことで会員同士の絆を深め、顧客ロイヤリティを高めた。また新商品開発をネット上で企業と会員が協働で行った結果、完成した新商品を開発に関わった会員やその友人・家族等が購入した。
 コミュニティ・マーケティングは、このような新時代のマーケティング手法として活用されるであろう。当初は導入や顧客との双方向のコミュニケーション等に戸惑いを覚えるかもしれないが、一旦その仕組みを構築してしまえば、それほど難しいことではない。


1:昭和30年代の「三種の神器」と呼ばれた「白黒テレビ」「電気冷蔵庫」「電気洗濯機」がその代表例である。最近では「パソコン」「携帯電話」「カーナビ」の3つが「平成の三種の神器」と呼ばれていた。

参考文献
1.NTTメディアスコープ(2004)「『コミュニティ・マーケティング』が企業を変える!―広告はなぜ効かなくなったのか?」かんき出版。
2.田中双葉、小野彩(2003)「ライブマーケティング―「見せる」広告から「まきこむ」広告へ」東洋経済新報社。
3.中島正之、鈴木司、吉松徹郎(2003)「図解でわかるくちコミマーケティング」日本能率協会マネジメントセンター。
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