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コラム「研究員のココロ」

コミュニティ・マーケティングとは(前編)
~マーケティング革新シリーズ(1)~

2005年04月25日 上田真弓


情報源の多様化・消費者嗜好の細分化により、プロモーションが難しい時代

 市場を考える際、従来は少数のトレンドリーダーを頂点とした、ピラミッド型で表現していた。頂点に位置するトレンドリーダーは、トレンドや情報をいわば全方位的に持っていた。そのため、企業はそれが徐々にピラミッドの下方に浸透するという想定で、市場をとらえることが多かった。

図表 従来の市場構造

図表 従来の市場構造


 一方消費者の情報を得る手段も、TVCMや雑誌・新聞広告などのマス媒体に限られており、消費者はこれらの媒体に大きな信頼を寄せていた。そのため企業も売りたい商品やサービスがあれば、これらのマス媒体を大いに活用した。つまりマス媒体を通じて情報を一方的に発信することで、消費者に商品・サービスを「認知」させ「興味・関心」を起こさせ「購買」行動へ結びつけ、売上をあげることが可能であった。
 しかし、現在はインターネットの普及や媒体の多様化・過剰化などにより、マス媒体を利用した広告のみでは、以前よりも「認知」から「興味・関心」の流れがスムーズにいかなくなったと言われている。広告によりターゲットとする消費者に「認知」はされるが「購買」行動に直結することが少なくなってきたというものである。
 現在はモノや情報が溢れている状況であり、消費者はかつてのように新しいモノや情報への飢餓感も持たない。さらには「マイブーム(注1)」などと表現されるように、自らの価値観にこだわりを持つ消費者が急増しているため、様々なトレンドが存在し、個人の興味が細分化している。これでは、消費者全体としての趣味嗜好がとらえにくく、「認知」をさせることさえも難しいと、頭を抱えるプロモーション担当者も多い。

(注1)
漫画家みうらじゅん氏による造語。1997年の日本流行語大賞に選ばれる。本来のブームは世間で「ある事が爆発的に流行すること」を指すが「マイブーム」は、世間の動きとは関係なく「自分だけ」「一部の個人だけ」の流行を指す。自分の趣味を他人にアピールする際に使用することもある。


注目される「口コミ」を利用した「コミュニティ・マーケティング」

 このような中で「口コミ」を利用したプロモーションや商品開発等がここ数年急増している。「口コミ」は「誰かにとっておきの情報として教えてあげたい」という気持ちから発生する行為である。さらにその情報を受けた人にも「感動」「驚き」などを共感してもらうことを期待し伝えられるものである。このような「双方向コミュニケーション」により「口コミ」は伝わり、購買行動に大きな影響をもたらす。
 特に現代のような大量の情報やモノが溢れる中では、消費者は自分にとって必要な情報を「自ら見極める」ことが必要となる。それには身近な友人・家族や好きな有名人などの「信頼をおく人」からの情報が有力となる。ここ数年「口コミ」が注目されている理由は、「口コミ」が「信頼をおく人」からの「客観的な事実」であり、購買行動に重大な影響を及ぼすことによるものである。
 「コミュニティ・マーケティング」は「口コミ」のような「双方向コミュニケーション」を、組織内で意図的に起こさせ、プロモーションや商品開発等を行う手法である。その概要については、後編に述べる。

参考文献
  1. NTTメディアスコープ(2004)「『コミュニティ・マーケティング』が企業を変える!―広告はなぜ効かなくなったのか?」かんき出版

  2. 田中双葉、小野彩(2003)「ライブマーケティング―「見せる」広告から「まきこむ」広告へ」東洋経済新報社

  3. 中島正之、鈴木司、吉松徹郎(2003)「図解でわかるくちコミマーケティング」日本能率協会マネジメントセンター

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