2005年3月14日付で、「サステイナビリティ・バンクを作ろう!」と題してエネルギーとお金の色について述べました。今回はその続きをご報告します。
1.前回のまとめ
新しい「色(環境、地域通貨、公正など)のある」金融の動きとして、日本でも市民出資による発電事業のほか、市民バンクやNPOバンクという「市民金融」「金融NPO」という分野が生まれ、徐々に知名度を上げている。ここでは、こうした様々な機関や活動で、地域でのエネルギーとお金の循環を重視し、さらには地域の人材も活用しようとするものを、広く「サステイナビリティ・バンク」と呼んでみたい。色のあるお金やエネルギーをそうした「バンク」を通して作り出したり、さらにそこで働いたりすることができれば、地球や地域に貢献している感じがするし、新しい価値を生み出しているようで、とても充実して「楽しそう」と感じないだろうか。様々な新しい法人制度や組合制度を活用して、お金やエネルギーに関する十分な知識を持って「色」を与える、言い換えれば「価値」や「質」を表現しようとする動きが今後も増えていくことを期待したい。
2.サステイナビリティ・バンクの機能
サステイナビリティ・バンクは、地域の人材・資源・お金を最大限に活用して、地域社会の抱える様々な課題の解決や、地域に根ざした循環型・コミュニティビジネスを促進しようとするプラットフォーム組織である。
具体的な形態は地域の特性や主要なメンバーによって様々なものが考えられる。また、事業の内容としても、ネットワーキング、マッチング・ビジネス機会の創出、広報・広告・普及啓発、マーケット調査、地域教育、技術支援・コンサルティング、資金提供(アレンジ)、政策提言・情報発信など、多岐にわたるものが考えられる。そして、共通して①お金の循環 ②エネルギーの循環 ③人の循環を(直接・間接の)機能として持っている。①では、ただお金を投融資するのではなく、持っている様々な機能を用いて投融資先を支援する、ベンチャーキャピタルでいう「ハンズオン」型のスタイルで資金の回収率を上げるような、ソーシャル・ベンチャー・キャピタルのような力が発揮される。その原資は、出資でもよいし助成や寄付の運用ということもある。
サステイナビリティ・バンクに関連し、または推進母体となりうる既存の団体や、積極的な参画が期待される団体も、事業内容によって様々ありえるが、例えば自治体(公共サービスの提供者として)、NPO/NPO等支援組織(公共と民間の中間領域の担い手として)、地域金融機関(地域における資金の循環の中核的担い手として)、各種組合(生協、農協、漁協、森林組合など)(組合員に対する奉仕を目的とした組合組織として)、一般企業(地域に密着したビジネスや公益的事業行う企業として)が挙げられる。
国内の具体例としては、NPO法人北海道グリーファンド(グリーンファンド基金や(株)自然エネルギー市民ファンドによる市民出資の融資を通して風力発電事業を展開)やその他の金融NPO、コミュニティビジネス支援団体、NPOや社会的事業への融資をリードしている労働金庫、信用金庫などがモデル的な特徴を持っている。
どのような団体においても課題(具体的に長期的に取り組めるか、既存制度や商品と整合するかなど)があろうが、先に挙げた3つの循環機能(お金、エネルギー、人)に着目した、ユニークで革新的な既存資源の活用を展開しうると考える。
例えば既存の金融機関においては、既存の資産やノウハウを活用しながら新規顧客を獲得したり、地域におけるプレゼンスを拡大したりするきっかけとなりうる。あるいは、地域に密着した事業を行う企業と自治体の協働を通してサステイナビリティ・バンクの機能が発揮されることもあるだろう。
このように、本稿ではサステイナビリティ・バンクに限定的な定義を与えようとしているわけではない。またそれは1つの法人によって担われるのではなく、事業の内容によって営利性と非営利性を組み合わせたり、集団的な投資スキームを持ったりすることが有効と考えられる。
3.地域の金融機関への期待
コミュニティビジネスや、NPOへの資金の出し手としては、既に信用金庫、信用組合、労働金庫、地方銀行などで取り組みが行われている。また、単独の取り組み以外にも、自治体の制度融資(損失補償)を利用した支援制度もある。
地域の金融機関は、地域の社会経済が持続可能(サステイナブル)であってこその存在であり、そうした意味からも、伝統的に間接金融機関が蓄積してきたはずの審査機能を活用(再活用)しながら健全な事業展開を促しつつ、地域・地球環境への貢献(エネルギーの循環)もあわせて評価し、自分自身がサステイナビリティ・バンクになるような試みを期待したい。ベンチャー向けの資金を多くの金融機関が専門の会社を通して供給しているのと同じように、社会的・公益的な事業・企業向けの資金を専門の会社を立ち上げて集約させることも可能であろう(非営利事業にかかるリスク・リターンを集約管理するためなど)。金融機関が有している金融ストラクチャリング能力や事務管理能力を「核の黒子」として活用して、こうした事業に精通したNPOや支援組織、自治体、関連する企業と連携していけば、お金と人の地域における循環ができる。これに加えて、京都議定書が発効し、温室効果ガス(二酸化炭素等)排出量が新たな経済価値を生む時代に、省エネルギーや自然エネルギー事業などを通してそれらを統合したサービスを行えば、「色のあるお金」と「色のあるエネルギー」という「色のある」サービスを提供することができるだろう。