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Business & Economic Review 2009年6月号

【REPORT】
立地分散から再編に向かう電気機械産業

2009年05月25日 横田朝行



要約

  1. 電気機械産業はわが国を代表する産業であり、事業所数、従業者数、製造品出荷額等、付加価値額などの指標で、輸送用機械とともに製造業の中核を占めている。都道府県ごとに、電気機械産業が製
    造業全体の付加価値額に占める割合をみると、多くの県で基幹産業となっている。

  2. 1990年以降、国際的な競争の激化や最終製品の海外生産の進展が電気機械器具製造業と情報通信機械器具製造業の縮小をもたらした反面、電子部品・デバイス製造業にとっては現地調達の難しい基幹部品等の輸出の増大につながった。このような経済環境の変化に対応して、電気機械産業は付加価値率が相対的に高い電子部品・デバイス製造業にシフトするという対応を取ってきた。このような変化は、どの部門の事業所が立地しているかによって、地域の成長に異なった結果をもたらした。

  3. 都道府県の付加価値額の地域間変動係数をみると、電気機械産業の工場立地は全国に分散している。90年から2006年の付加価値額の年平均増減率は最大の三重県の7.4%増から最小の神奈川県の8.0%減まで、都道府県ごとに大きな差が生じ、90年時点で付加価値額が小規模であった道県のなかから、付加価値額を大きく増加させた地域が出てきた。

  4. 2002年から2006年の回復過程で、急速に付加価値額を増やした8県のうち7県では、電子部品・デバイス製造業の寄与が極めて大きい。これらの県では、a.特定企業の活発な投資が呼び水となり関連企業が多数立地した、あるいは、b.地域全体の産業の規模が小さいため、特定企業の動向の影響が大きく出るという特徴がある。

  5. 2006年末の全国の工場敷地面積は2004年末対比で43万2,000㎡(0.3%)の増加となったが、この間の撤退・縮小面積は357万5,000㎡(2004年末の工場敷地面積の2.8%に相当)であった。2005年、2006年は、
    新規立地が増え、製造業の国内回帰ともいわれたが、純増は小さかった。2002年から2006年の工場立地においては、電子部品・デバイス製造業の大規模工場が主役であり、工場撤退が起こる一方で新しい大規模工場が稼動し、大きく成長する地域と縮小する地域に分かれた。

  6. 電気機械産業は90年代から新規立地だけでなく撤退・縮小も行ってきた。自治体においては誘致活動と共に、誘致工場に対するフォローアップが必要である。政策としては、誘致工場の技術力や生産技術の向上を支える人材の育成・確保が重要である。また、立地企業が開発部門を持つ場合、研究者が事業を立ち上げることがあり、創業支援体制の充実などが必要とされよう。

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