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リサーチ・フォーカス No.2021-032

コロナ禍の現預金、成長投資に活用余地 ―投資機会のある産業に23兆円滞留―

2021年10月07日 西岡慎一


企業が保有する現預金が増加している。これには、企業が金融機関からの借り入れを拡大し、コロナの流行による不測の事態に備えてきた点が背景にある。

今後、経済が正常化するにつれて、企業は積み上がった現預金と債務を調整する必要がある。この際、企業にとっての望ましい調整方法は「投資機会の有無」によって異なる。仮に、投資機会がなければ、現預金を債務返済に充当することが合理的となるが、逆に、投資機会があれば、現預金を元手に前向きな投資を実行することが望ましい選択肢となりうる。これにより、企業価値の一段の向上と過剰債務の解消を同時に図ることが可能となる。

試算によれば、半数近くの産業で、高い資本収益率が維持されており、「投資機会がある」と判断される。こうした産業では、コロナ前から経営の効率化や新規需要の獲得が積極的に図られているうえに、コロナ禍でも成長期待が崩れておらず、今年度の設備投資計画は多額にのぼる。コロナ禍で増加した37 兆円の現預金のうち23 兆円はこれらの「投資機会がある」産業で保有されており、成長投資に活用する余地がある。こうした状況は、投資機会がなく、手元資金の多くが債務返済に充当されたリーマンショック時とは大きく異なる。

ただし、日本企業はコロナ前から現預金を蓄積し、前向きな投資への活用には慎重とされてきた点には注意を要する。企業による現預金の有効活用を引き出すためにも、政府には、デジタル化やグリーン化をはじめ成長分野での戦略・目標・行程を具体的に提示するなど、投資を巡る不透明感を緩和させる取り組みが求められる。


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