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JRIレビュー Vol.10, No.94

道路構造単位に着目したブロックベース型ODD定義手法の提案と各ODD定義に応じた安全対策の指針
ラストマイル自動運転移動サービスの安全性確保に向けて

2021年10月06日 逸見拓弘


高齢化の進展に伴い、地域における住民の移動手段に係る課題が顕在化している。この社会的課題の解決手段として期待されているのが、「ラストマイル自動運転移動サービス」の実装である。

政府も、その社会的意義を踏まえラストマイル自動運転移動サービスの実装に期待を寄せている。政府による関連法令の整備も後押しとなり、2021年3月、福井県で、運転自動化レベル3相当のラストマイル自動運転移動サービスの本格運行が開始された。福井県のサービスは、廃線跡という限定空間を対象としたサービスだが、政府は「2025年度までに多様なエリアで、多様な車両を用いたレベル4無人自動運転サービスの40カ所以上実現」を目標に掲げており、今後は限定空間だけでなく一般道のような混在空間でのラストマイル自動運転移動サービスの実装も目指されていくものと考えられる。

一般道でのラストマイル自動運転移動サービスを実現するための最大の課題は、運行設計領域(Operational Design Domain 、以下「ODD」)の定義手法と、定義したODDの範囲内においてどこまでのリスクが許容されるのかといったリスクの考え方・基準の問題である。現状では、“リスク”に対しての業界共通の考え方・基準がないため、自動運転システム事業者は自動運転車両の安全設計の道筋を見出せずにいる。

本論文では、一般道を対象としたラストマイル自動運転移動サービスにおけるODD定義手法を提案し、実装への道筋を示す。また、定義したODDの範囲内において合理的に予見されるリスクの考え方を示し、そのリスクに対する安全対策の指針を示す。

本論文で提案する手法では、自動運転車両の走行経路を道路構造単位でブロック分割し、道路ブロックごとにODDを定義する。つまり、走行経路を道路構造単位でブロック分割し、分割された各道路ブロック単位に対して1対1対応でODDを定義していくことで走行経路全体のODDを定義する。

上記手法は、道路ブロック内で予見される交通事故リスクを類型化しやすいという利点を有しており、予見される交通事故リスクに対して安全対策を講じることで、安全性確保を実現できる。

予見される交通事故リスクに関する安全対策の検討方針は、二つの視点で進めるべきである。一つは、自動運転車両システム側の安全対策を検討する視点であり、もう一つは、道路インフラ側の安全対策を検討する視点である。前者だけでは防ぎきれない交通事故の発生を想定すると、後者の検討も重要である。

とくに、道路インフラに安全対策を講じることは既存の地域交通の安全性の向上という便益ももたらす。また、ブロックベース型のODD定義を基礎として自動運転システムの開発を検討することは、自動運転システムの効率化に繋がる可能性がある。

一方で、ブロックベース型ODD定義手法には、道路ブロックをどこまで細分化すべきなのか、隣接ブロックとの境界条件をどのように考慮すればよいのか、といった課題は残される。また、道路インフラに安全対策を講じる場合、少なからず行政の協力や費用負担が必要になるという難しさもある。今後、自動運転車両を使用した公共交通を社会が受け入れていくにあたり、行政はどこまで費用負担すべきか、その合意形成も残された大きな課題である。
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