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国際戦略研究所 研究員レポート

【米国情勢報告】アメリカの新型コロナをめぐる状況―感染拡大にかかわらず、アメリカの選択肢に「ロックダウン」はもうない-

2021年09月27日 市瀬由香里


■はじめに
米国は新型コロナウイルスのワクチン接種では大きく先行していた。バイデン政権は21年1月の発足以来、わずか59日間で1億回の接種を突破し、就任92日目で2億回を突破するという猛スピードで当初予想を大きく上回った。だが、接種スピードは以来少しずつ減速し、バイデン大統領が掲げた「独立記念日(7月4日)迄に成人の70%が少なくとも1回接種する」、という象徴的な新型コロナからの「独立」は失敗に終わった。(当時67%程度に留まったが、1カ月遅れでようやく70%に到達。)

9月25日時点で、少なくとも1回目のワクチン接種を終えた人口は全体の約64%、完了した人口は約55%に上るも、接種率の増加は7月以来、横ばい状態が続いている。

一方、7月1日より、それまで1年以上継続されていた学校、民間ビジネス、公共セクターへの「ロックダウン措置(In-place order)」が事実上全米で解除された。それと同時期には米国でデルタ株の蔓延が拡大し、新たな「パンデミック期」へと突入していく。感染力の強いデルタ株によって、かつては約220人/日だった新規感染者は約15万人/日に激増し、ピークでは入院患者数は約10万人/日、死亡者約2,000人/日を上回る程に悪化した。更に累計死者数は約68万8,000人を突破し、1918~19年に大流行したスペイン風邪の総死亡者の67万5,000人を超え、また約500人に1人が新型コロナによって死亡したことも明らかとなった。(9月26日現在、ニューヨーク・タイムズ集計)

このような状況においても、バイデン米大統領の首席医療顧問を務めるアンソニー・ファウチ博士は、8月1日のABC Newsのインタビューに対し、こう答えている。「既にワクチン接種は“充分”と言える人口比率の値で進んでいる。したがって米国でロックダウンを繰り返す予定はない。一方で、ワクチン未接種者(unvaccinated)内における感染拡大は、今後も悪化していくことが予想される。」ファウチ博士は、ワクチン未接種者が感染爆発のホットスポットであると明確な問題意識を示し、ある意味でワクチン未接種者における感染は「自己責任」というスタンスを示唆したのである。

一見混迷を極める米国の新型コロナ対応だが、明らかなことがある。それは、感染が再拡大しているにもかかわらず、今後「ロックダウン」に戻るべきではないという認識が、行政機関、ビジネス部門、医療機関、国民の中で概ね共有されていることだ。本稿では、米国の「コロナとの共存戦略」を分析する。なお、新型コロナを巡る動きは予断を許さず、今後米国の方針が再び変わる可能性もあろうが、日本もようやくコロナとの共存戦略が検討され始めているので、今後の参考にするべく本稿を執筆した。

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