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予測不可能な時代の地域の在り方を考える

2021年09月28日 福田彩乃


 現代は「VUCAワールド」と形容されるという。2016年の世界経済フォーラム(ダボス会議)で用いられた表現だ。世界がまさに“予測不可能な状態”にあることを指す。これまで重要課題とされてきた人口減少に伴う縮小経済への対策に加え、もはや非日常でなくなった大規模自然災害への対応など、我々は経験のない局面への対応を頻繁に迫られるようになっている。
VUCAとは、Volatility(変動制), Uncertainty(不確実性), Complexity(複雑性), Ambiguity(曖昧性)の頭文字をとった造語で、予測できない状況をさす。

 そうした中、日本国内で特に地方部に暮らす人々の豊かな生活を維持、拡大していくためには、国が進める施策に頼るだけでなく、地域自らがチャンスと、その地方特有の発生リスクを判断し、主体的に変化し続けることが重要ではないだろうか。こうした方向性が、徳島県上勝町の「葉っぱビジネス」や高知県馬路村の柚子を使った取り組みなど、地域活性化の好事例から導き出される成功の鍵を握る。これまでも、こうした姿勢が皆無だったわけではないが、社会の変化とデジタル技術の急速な進展を受け、副業などの自律的な要素を取り入れる個人がますます増えてきていることを見ると、地域経営も「自律」に向けて大きく転換していくことが求められるのではないだろうか。

 自律する地域へ舵を切り、それを持続的なものにしていくためには 、“地域の一握りのスター”だけでなく、 “普通の人”が新たな一歩を踏み出すための環境整備が欠かせない。具体的には、改めて「現状をどのように認識するのか」、「どのような特徴(資源、能力)があるのか」、「自分(たち)は何がしたいのか」などの自己認識を高める必要がある。また、望む姿を実現するために必要なスキル・技術を獲得する場として、例えばデジタル技術を試験的に利用できるラボ施設を整備したり、共に切磋琢磨できる仲間との交流・情報交換のためのバーチャル空間を設けることも考えられる。また、「自律」に向けては、地域外の人達に価値を認めて貰い、「自ら稼ぐ」という要素も不可欠である。ふるさと納税やクラウドファウンディングなどは、地域外の人達を巻き込む手段として有用である。

 このように、自己認識の棚卸から付加価値の実現まで、一気通貫で展開することが望ましいが、地域単位で推進することの難易度が高いのもまた事実である。現在、私たちは、農村地域と共に、デジタル技術を活用した変革の青写真を構想している。引き続き、現場と行政の施策立案の懸け橋として、「新たな自律する地域の在り方」を模索していきたい。


※記事は執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。
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