リサーチ・フォーカス No.2021-028 2021年の出生数・死亡数の見通しー新型コロナの影響は限定的だが、一部に見過ごせない動きも 2021年09月15日 藤波匠新型コロナウイルスの感染拡大による、わが国人口動態への影響を概観した。コロナ禍によって、2020年5~7月に妊娠届出数が急減したが、その後回復し、2020年末以降は前年と同水準まで戻った。妊娠・出産に対する新型コロナのリスクが正しく伝わり、妊娠を先送りする人が減ったためと考えられる。妊娠届出数から算出した2021年の出生数(日本人)は、前年比▲3.7%減の81万人程度と見込まれる。2021年1~2月の出生数は、前年比で大きく減少したものの、3月以降は回復している。2016年以降の出生数は年平均▲3.5%減で推移しており、2021年の減少幅はトレンドに沿ったペースに落ち着く見込みである。2020年の死亡数(日本人)は前年比▲0.61%減となった。新型コロナ対策が、インフルエンザなどの流行性感冒や肺炎などの罹患を抑制したためと考えられる。2021年の死亡数は、上半期の速報データから概算すると、前年比+3.7%増の142万人前後と見込まれる。急増の印象を受けるが、これは2020年に減少した裏返しである。国立社会保障人口問題研究所の将来人口推計では、わが国の死亡数は2040年に166万人へ増加することが示されており、2021年の142万人という死亡数も、そのトレンドの範囲内に収まる。数字の上では、出生数・死亡数とも、コロナ禍の影響は限定的との印象を受けるものの、一部に多大な影響を受けた人たちがいることは見逃せない。出生数に関しては、妊娠の先送りによって希望する子どもを持つことが叶わないカップルが生じることや、経済的困窮に置かれた若い世代の増加、結婚を希望する人たちの出会いの場が少なくなっていることなどである。死亡数に関しては、総数を追っているだけでは見落としがちな女性自殺者の急増も深刻な問題である。接客業に従事する非正規雇用者など、一部の女性が多大な経済的影響を受けた。新型コロナによる人口動態面への影響は、差し当たり懸念されたほどではなかったが、一刻も早いコロナ禍の克服と経済活動の正常化に向けた取り組みはもちろん、とりわけ影響の大きかった人たちに向けた手厚い支援が不可欠である。(全文は上部の「PDFダウンロード」ボタンからご覧いただけます)