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JRIレビュー Vol.9, No.93

社会課題解決型ビジネスを切り拓くスタートアップ-欧米スタートアップのデジタル・イノベーションからの示唆

2021年09月27日 岩崎薫里


従来、社会課題の多くの領域はビジネス化が難しく、民間企業の参入は限定的であった。ところが近年、①デジタル・ツールを活用したイノベーションの創出余地の拡大、②環境関連政策の世界的な推進からの後押し、③民間企業が社会課題の解決に乗り出すことへの社会的要請、を追い風に、参入する民間企業がスタートアップを中心に増えている。

スタートアップは未踏の分野に果敢に踏み込むという特性を有するが、社会課題の解決はまさに未踏分野である。インターネットの登場以降、スタートアップは主に人々の利便性や企業の業務効率の向上につながるサービスを提供してきた。しかし、そうしたサービスが競合ひしめくレッドオーシャンと化すなか、スタートアップが未開拓のブルーオーシャンの一つとして注目するようになったのが、社会課題の分野である。

特定の社会課題をビジネスの手法で解決しようと、多数のスタートアップがさまざまな切り口から挑むことは、小さな実験を重ねるのと同じであり、ここにスタートアップが関与する意義がある。多くが失敗に終わるものの、少数であっても成功モデルが出現すれば、ビジネス化への突破口となり、その課題も解決に向けて前進することになる。

同じ社会課題解決型スタートアップであっても、取り組む課題やその手法によって成長軌道は異なる。一方でほぼ共通する点として、まず、デジタル技術の積極活用が挙げられる。それによって、地理的・物理的制約から解放されてユーザーが広がる、高性能・高品質の商品を提供できるようになる、コスト削減やリスク管理が容易になる、などの効果を実現している。また、各社とも向き合っているのは顧客の課題であり、それが直接または間接的に社会課題の解決につながっている。いくら崇高なミッションを掲げていても、顧客の課題を解決しない、あるいは解決するにしてもその価値が価格に見合わないと判断されると、顧客の支持を得ることはできない。

社会課題解決型スタートアップを資金面で支えるのが、多様な資金調達先である。ベンチャーキャピタル(VC)やエンジェル投資家に加えて、特定の社会課題の解決に直接的に関与したいと考えるインパクト投資家や、従来、営利企業とは縁遠かったフィランソロピー(慈善活動、社会貢献活動)組織からの資金提供が目立つようになっている。

わが国の社会課題解決型スタートアップは絶対数において依然として少ない。これは主に、スタートアップ全体の創出力が弱いためである。創出力強化に向けた政策はすでに出そろっているが、より根源的な取り組みとして、チャレンジする人、リスクをとる人が賞賛されるとともに、失敗を許容し、やり直しの機会が豊富にある社会にわが国をつくりかえることが必要ではないか。

社会課題解決型スタートアップの活躍に重要な、多様な評価軸を有する資金調達先が、わが国では限られていることも問題である。そこで、スタートアップのなかでもリスクのやや低いもの向けに、VCほどハイリスク・ハイリターンでない資金調達手段を導入することは検討に値する。例えば、アメリカにはRevenue Based Financing(RBF)、Shared Earnings Agreement(SEAL)という投資スキームがある。投資資金をエグジット(IPOやM&A)で一気に回収するVCと異なり、スタートアップの売上高あるいは利益に応じて少しずつ回収していくというもので、わが国の参考になる。





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