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藻類産業発展のカギは「地域連携」と「カスケード利用」

2021年09月14日 福山篤史


 藻類は、光合成を通じて成長し、大気中の二酸化炭素を固定することでバイオ燃料や化成品原料を作り出すことができる。このことから、カーボンニュートラルの実現に向けて、有力な解決策の一つとして注目を集めている。近年は、微細藻類からバイオジェット燃料を作りだす動きが顕著だ。株式会社ユーグレナが、微細藻類由来の油脂と使用済み食用油を混合したバイオ燃料でホンダジェットの飛行に成功した、というニュースを耳にした方も多いだろう[1]。もっとも、藻類から作り出すことができるものはバイオ燃料だけではない。医療品、健康食品、化粧品、飼料・肥料そして化学製品まで、実に幅広い分野の原材料になる点が藻類の魅力だ。

 これほど多様な用途が期待される藻類であれば、国としても研究開発の方向性を示すことが有効だろう。海外に目を向けると、米国では2010年にエネルギー省が主導してロードマップを作成し、燃料としての利用を主軸に研究開発が進められてきた[2]。また、欧州ではロードマップ等は作成されていないものの、2016年以降は燃料以外での藻類の利活用に関する多数のプロジェクトが動いており、特に燃料以外の各種分野への総合的な展開を目指す方針で進められている[3]。一方、日本においては、藻類の利活用に関する明確な方針が示されておらず、燃料関連の研究が中心に存在しつつも、食料・飼料・化学製品などに関連する研究も点在している。また、全般的に基礎研究寄りのものが多く、事業化に至る道筋が展望されていない技術も多い[3]

 日本における研究開発の進め方は、一見すると方針が不明確で、効率が悪いように見える。ただ、藻類産業の発展にとっては、あえて焦点を絞り込まない姿勢は正しいかもしれない。多様な物質を同時に作り出すことができる、という藻類特有の性質を活かし、藻類そのもの或いは藻類内外で合成された物質を多段的に利用することができれば、藻類関連技術の事業化を重層的に進めることができるからである。そこでは、複数の事業者・研究機関が、それぞれの研究成果・技術を持ち寄り、原料調達から需要先確保までを一体で行う体制を構築することがカギとなろう。

 現実にも、こうした動きは国内でも少しずつ顕在化し始めている。仙台市では、家庭を排出源とする下水と産業活動から発生する二酸化炭素を組み合わせ、それによって培養した微細藻類体内の油脂をバイオ燃料、培養時の上澄み液中の糖類を農業資材として多段階で利用する試みが始まっている[4]。また、佐賀市では、佐賀市バイオマス産業都市構想のもと、下水浄化センターで発生する二酸化炭素と脱水分離液を用いて培養した微細藻類(ユーグレナ)からバイオ燃料や肥料を作る取り組みと、清掃工場の排ガスから分離回収した二酸化炭素を用いて培養した微細藻類(ヘマトコッカス)から機能性食品・化粧品を作る取り組みが同時並行で進められている[5]。佐賀市の取り組みでは、それぞれの用途で個別に利用が進められているが、物質の抽出方法を工夫することで、複数の用途で段階的に利用できる可能性も十分にあるだろう。

 「藻類を余すところなく使い切る」というコンセプトのもと、地域が連携して藻類の培養主体と需要先を結び付け、藻類を多段階的に利用する体制を構築することで、日本の藻類産業全体を活性化することが当面の大きな課題であると言えよう。

【参考文献】
[1] 株式会社ユーグレナ,「ユーグレナ社のバイオ燃料を使用した初フライト実現」
[2] U.S. Department of Energy, 「National Algal Biofuels Technology Roadmap」
[3]株式会社ちとせ研究所(2020),「これからの藻類ビジネス~藻類培養の基本から生産技術、ビジネス展開の最新動向まで~」(株式会社情報機構)
[4]「パナック株式会社, 仙台防災未来フォーラム(2021年3月7日)発表資料「微細藻類から創る画期的な 次世代エネルギーの研究開発」
[5]佐賀市, 「バイオマス産業都市さがこれまでの取組」


※記事は執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。
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