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リサーチ・フォーカス No.2021-022

商品市況高も持続的な物価上昇は遠く ―制度・慣行に根差したサービス価格の硬直性が足かせ―

2021年08月05日 西岡慎一


国際商品市況が高騰しており、わが国物価にも波及している。4~6月期の輸入物価は前年から2割上昇し、消費者物価でも財価格が前年比プラスに転化している。近年、輸入物価と消費者物価の連動性が高まる傾向にあり、輸入物価の上昇が今後の消費者物価を一段と押し上げる可能性がある。

輸入物価と消費者物価の連動性が高まっている背景として、企業の価格転嫁姿勢が徐々に強まっている点が挙げられる。価格転嫁の難しさはリーマン・ショックを境に緩和しており、製造業のマージンも改善傾向にある。世界的にみても、財価格の上昇率は日米欧でほとんど変わらなくなっており、日本の下落が目立った2000 年代とは状況が変化している。

もっとも、企業の価格転嫁姿勢の強まりが、持続的な物価上昇への局面変化を意味するわけではない。コスト高による物価上昇は、消費者の購買力を低下させることで需要減退を招き、かえって先々の物価の押し下げに作用する。海外経済に比べて景気回復が遅れるわが国では、このメカニズムが働きやすい。

さらに、財価格とは異なり、サービス価格の前年比は欧米よりも1~2%低く、持続的な物価上昇の妨げとなっている。これには賃金の弱さが強く影響しており、日本型の雇用慣行が労働需給を反映にしにくい賃金設定の一因となっている可能性がある。また、サービスの6割を占める家賃や公共料金も、取引に関する制度や慣行を背景に硬直的である。これらを踏まえると、今後もわが国の基調的な物価の伸びは低位にとどまると考えられる。


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