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モビリティ領域でのアフターコロナにつなげる新たな気づき

2021年07月27日 程塚正史


 東京五輪が始まった。コロナ禍の中での五輪となった。できれば、通常通りの五輪を楽しみたかったと感じる向きは多いだろう。とはいえ、選手や関係者の方々の苦労が絶えないなかで恐縮だが、コロナ禍だからこその五輪の楽しみ方を見出せないかと考えてみることにしたい。

 五輪も含め、コロナ禍はこれまでの習慣を一変させた。人々の意識や暮らし方が変わった。アフターコロナ時代に、元通りになることもあれば元に戻らないこともあるだろう。コロナ禍で半強制的に作り出された状況に適応してみたら、意外とそれが便利だったということもある。

 何が一時的な変化で、何が継続する動きなのかを見極めるのは難しい。そもそも変化を定量化するのも難しいが、ここでは、自動車やモビリティサービスに関連して、日本で、いま見られる変化についての事例やデータをピックアップして考えてみたい。

 まずは、都市部に住む多くの方々が感じているであろう、公共交通機関の利用状況の変化がある。ニッセイ基礎研究所の調査によると、コロナ禍の前後で電車やバスの利用が「減少」したのは36.2%、「増加」したのは5.7%と圧倒的に「減少」が多い。これは全世代共通の特徴のようだ。

 同時に、自動車の利用状況も変化している。「Response」を運営するイードのアンケート調査によると、自動車利用に関して「利用頻度は増えたし、今後も増えたままだと思う」との回答が16.9%に上った。「利用頻度は変わらない」も71.0%だが、コロナ禍によって自動車への支持が高まっているように思われる。

 自動車を個室空間として利用する向きもある。各地の車体改造サービス事業者や架装メーカーでは、バンタイプの車両などの車内をオフィス仕様に改造するサービスが人気なようだ。大手の日産自動車も一時期、自社のWEBページにて、車室内にて快適に仕事をする工夫について取り上げていた。

 住まい方も変わってきている。特に、都心部から郊外や地方への流れが進む。土地や家屋などを仲介するLIFULL HOMESによると、東京圏では、本厚木や大宮といった準郊外や、湘南や木更津といった郊外の人気が上昇しているようだ。内閣府の「生活意識・行動の変化調査」でも、東京23区の20代男女の35.4%が移住を検討し始めたなど、特に都心部の若年層を中心に郊外や地方への関心が高まっているという。

 巣ごもりでの暮らしのため、電子商取引(EC)の利用が増えている。総務省統計局のデータによると、2020年4月頃から、高齢世帯ですら、EC利用率が5~6%の伸びをはじめ急上昇しているという。経産省所管の流通経済研究所によると、2020年のネットスーパー利用数は前年に比べて1.5倍に拡大したとのことだ。

 以上はそれぞれ、コロナ禍による表面的な動きだ。これらのデータや事例から、一概に今後の方向性を断言することはできない。しかし、例えば「郊外の住宅地が人気となり、そこではラストマイル物流が活発に動き回るのではないか」や「個室としての自動車がアフターコロナでも再評価されるようになるのではないか」などの推定はできそうだ。今後、このような仮説が妥当なのかどうか、ワクチン接種率の拡大とともに観察していきたい。

 コロナ禍によって良くも悪くも新たな気づきが生まれつつある。コロナ禍だからこその五輪の楽しみ方として、例えば、無観客での静寂だからこそ選手の息遣いやつぶやきが聞こえてきたり、これまでは観客の人波に埋もれていたバックヤードのスタッフの献身ぶりが感動を呼んだりするようになるかもしれない。多くの方々が苦難を強いられる今だからこそ、この状況での新たな気づきを、次なるサービスや事業につなげていくことを考えたい。


※記事は執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。
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