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リサーチ・フォーカス No.2021-017

歯止めかからぬ中高年層の賃金下落 ―割高な賃金の調整完了には生産性向上が不可欠―

2021年06月25日 西岡慎一


賃金が伸び悩んでいる。なかでも、大企業における40~50 歳代の中高年層で、賃金下落に歯止めがかかっていない。こうした動きは、人手不足を背景とした若年層の賃金上昇とは対照的である。

中高年層の賃金下落は、大企業で賃金カーブの調整が続いている点が背後にある。年功賃金制のもとで、賃金は若年期に生産性よりも低く、中高年期に生産性よりも高く設定されてきた(後払い賃金方式)。大きな構図のなかで捉えると、バブル崩壊後の低成長期に入ってから、生産性との乖離を埋めるよう中高年層の賃金が下落しており、現在もなおその調整過程にある。

試算によれば、長期にわたる賃下げの結果、40 歳代の賃金は概ね生産性に見合う水準へ調整されてきた。もっとも、50 歳代の賃金は、なおも2~3割の低下余地がある。賃金カーブは、「団塊ジュニア世代」の大幅な賃下げで調整されてきた。仮に、生産性の向上がなければ、賃金カーブの調整は、団塊ジュニア世代が50 歳代後半を迎える2030 年ごろまで続く可能性がある。

賃金と生産性との間の不均衡は、経済に歪みをもたらしうる。大企業では、賃金が割高な中高年層を抱える分、若年層の賃金が割安となり、若手人材の確保が困難となる。中高年層でも、割高な賃金設定が転職市場の活性化を妨げ、効率的な労働移動を阻害しうる。家計でも、中高年層の賃金調整が、将来所得に対する期待の低下や不確実性の増大につながり、消費を抑制しうる。これらの弊害を解消するには、生産性の向上で賃金調整を進めることが重要となる。


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