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JRIレビュー Vol.8, No.92

アメリカ経済見通し

2021年08月04日 井上肇松田健太郎


アメリカでは、新型コロナのワクチン接種の進展とともに、活動再開が進み、景気が回復している。経済が正常化に向かうなかで、需要の回復力が強い一方、労働力の確保や部品・原材料の調達などで供給制約が生じており、一部でインフレ懸念も浮上している。

労働市場では、今秋にかけて供給制約が緩和に向かい、労働需要が充足されることで、雇用者数は高めの伸びが続くと予想される。労働需要とともに労働供給も増加するため、失業率の低下ペースは緩やかなものとなる公算が大きい。労働市場からのインフレ圧力はそれほど大きくないとみられる。

個人消費については、貯蓄取り崩しによるリベンジ消費が顕在化することに加え、雇用・所得環境の改善を追い風に、堅調に推移する見通しである。個人消費のけん引役は、これまでの財消費から、サービス消費にシフトする見込みである。

住宅価格は高騰しており、足許の販売鈍化の主因となっている。当面は価格の高止まりにより、住宅販売は勢いを欠くと予想される。住宅価格の変動による金融面のリスクが懸念されるが、住宅ローンの借り手の返済能力はリーマン・ショック前よりも良好であり、金融システム不安が生じる可能性は小さいとみられる。

インフレ率は、需要回復の一服や供給制約の緩和などにより2022年央に2%程度へ低下する見込みである。その後、労働需給の引き締まりなどを反映して再び緩やかに上昇していくと予想される。

金融政策については、12月のFOMCで雇用の本格回復が確認され、2022年1月からのテーパリング開始が決定される見込みである。利上げ開始は、失業率が構造失業率を下回り、かつインフレ率が安定的に2%に到達する2023年入り後になる公算が大きい。

財政政策については、超党派で合意した1兆ドル規模のインフラ投資のうち、新規支出である5,790億ドルがGDP押し上げに寄与する見込みである。ただし、過去の財政執行パターンを踏まえると、2022年中の景気押し上げ効果は限られる。

以上を踏まえると、ワクチンの普及や経済対策の効果などを追い風に、2021年の実質GDP成長率は6.3%と、1984年以来の高成長になる見通しである。2022年は、経済正常化や家計貯蓄の取り崩しの動きが一巡するものの、雇用環境の改善やインフラ投資の拡大などに支えられて潜在成長率を上回る高めの成長ペースが持続する見込みである。

リスクシナリオは、想定以上にインフレ率が上昇するケースで、FRBが早期の金融引き締めに動かざるを得なくなり、コロナ後の高成長が頓挫する可能性である。さらに、引き締めペースが市場参加者の予想を超え、資産価格の調整や企業の債務問題の顕在化などを招くと、実体経済への悪影響を増幅させる恐れがある。
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