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RIM 環太平洋ビジネス情報 Vol.21,No.81

気候変動問題とグリーン・ファイナンスを取り巻く論点-求められるグリーン・リカバリーの実現

2021年05月12日 清水聡


新型コロナウイルス感染症の大流行により、世界の温室効果ガス(GHG)排出量は2020年に前年比約7%減少したとみられるが、長期的にみれば、パリ協定の目標達成は極めて難しい情勢である。排出量削減策の実施のために残された時間は少ないといわれており、今後、再生可能エネルギーの拡大、石炭利用の縮小、エネルギー効率の改善、運輸等の分野での電動化、エネルギー集約的な産業における脱炭素への取り組み、などを迅速に推進しなければならない。

こうしたなか、環境関連案件への資金供給を意味するグリーン・ファイナンスの重要性も高まっている。グリーン・ファイナンスを拡大させるためには、①グリーン投資案件の供給を増やすこと、②グリーン・ファイナンスを実施する資金の供給を増やすこと、③グリーン・ファイナンスを円滑に実施するための仕組みを作り上げること、の3つが求められる。これらのことを、グリーン・ファイナンスの各分野、すなわち再生可能エネルギーを含むインフラ、エネルギー効率の改善、食料・農業・土地利用、などにおける着実な資金供給の実現に結びつけることが求められる。

グリーン・ファイナンスの一部ととらえられるESG投資は世界的に拡大しており、その傾向は今後も変わらないであろう。ただし、パンデミックに直面し、環境要因の重視が多少見直され、社会要因に重点がシフトしている模様であることから、今後の動向を注視することが重要であろう。また、アジアにおけるESG投資は欧米に後れを取っており、キャッチアップが課題となっている。

気候変動に伴うリスクは、物理的リスクと移行リスクに分けられる。企業や金融機関はこれらのリスクを正しく分析し、その低減に努めることが不可欠である。また、中央銀行も、金融機関が気候関連・環境リスクを適切に管理し、抑制するように仕向けるべきである。

グリーン・ファイナンスの拡大を促進する環境関連の情報開示は、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)を中心に推進されている。また、経済活動の分類(タクソノミー)については、国際的に議論を継続する必要がある。さらに、カーボン・プライシングの導入は政治的に難しいが、GHGの排出削減を実現するためには不可欠と考えられ、これに関しても議論を深めていくことが重要である。

パンデミック後の景気回復と気候変動抑制を同時に実現する「グリーン・リカバリー」の重要性が強調されているが、実際には欧州諸国以外ではなかなか実現出来ていない。パンデミックがもたらした困難な状況の下でも、気候変動抑制策を着実に推進していくことが世界各国に求められているといえよう。
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