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リサーチ・アイ No.2021-008

野心的な温室効果ガス排出削減目標の裏にある「移行リスク」~リスク分析の強化と影響軽減策の検討が必要~

2021年04月27日 大嶋秀雄


2021年4月の気候変動サミットにおいて、日米両政府は、2050年脱炭素目標の達成に向けて、2030年の温室効果ガス排出削減目標を大幅に引き上げ。わが国は、2013年対比▲26%としていた目標を、同▲46%とする方針であり、今後、脱炭素の動きが加速する見通し。

一方、金融当局を中心に、気候変動や脱炭素社会への移行が経済や金融システムに及ぼしうる悪影響(気候関連金融リスク)の分析が進められている。気候関連金融リスクは2つあり、一つは、風水害や山火事、海面上昇等による被害である「物理的リスク」、もう一つは、脱炭素社会への移行に伴う政策・規制や技術革新、消費・投資行動等の変化などによる経済的影響である「移行リスク」。

各国当局で構成される「気候変動リスク等に係る金融当局ネットワーク(NGFS)」が昨年6月に公表したシナリオ分析を踏まえると、主要国が目指す2050年の脱炭素社会移行(産業革命以前に比べて2100年の気温上昇を1.5℃以内に抑制)は、物理的リスクを軽減する一方、CO2除去(CDR)技術等の確立がなければ、甚大な移行リスクを伴う可能性大。

脱炭素に向けた迅速な対応は必要ながら、移行リスクが顕在化して、企業業績や金融システムへ悪影響が広がった場合、目標先送りを余儀なくされる可能性。脱炭素社会への秩序ある移行を実現するため、各国当局は、気候変動対策と合わせて、気候関連金融リスクに関するデータ整備と分析手法の開発、および、分析結果を踏まえた財政措置等の影響軽減策の検討が必要。
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