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【次世代交通】
高齢者が気兼ねなく参加できるリモート会議の要件

2021年04月27日 岩崎海


 創発戦略センターは神戸市北区において、住宅地のラストマイルの移動手段に関する実証サービスを行っています。新型コロナウイルス感染症拡大のため、2020年4月に発出された緊急事態宣言下で、この実証サービスの準備を行いましたが、東京から現地に赴いての活動が制限されたため、リモート会議を導入して準備を続けざるを得ませんでした。この間、企業のなかではリモートワークが普及していきましたが、企業と生活者、とりわけ高齢者の方々とのコミュニケーションを対面ではなく遠隔で円滑に進めることは、必ずしも簡単ではありませんでした。その中で感じたことを記します。

 最大の壁は、リモート会議の運用とともにアプリの導入という点にありました。当初、私たちリモート会議を主催する側は、単に遠隔で話し合いができるだけではなく、ファイル保存機能があるアプリを選択しようとしました。リモート会議では生活者の皆さんとの話し合いに合わせて資料を共有して勉強会を行うのですが、会議が終わった後でも地域側で資料を見返して振り返りが出来るように、多彩な機能が備わっているアプリが便利ではないかと考えていました。

 しかし、このアプリを導入するには多くの困難がありました。地域の方々は主に高齢者であり、そもそも、リモート会議の経験がありません。アプリのダウンロードの仕方が分からない、ダウンロードに際し認証が必要と言われても意味が分からない、複数の認証方法が準備されているがゆえにどれを選ぶべきか分からない、ダウンロード手順が分からなくなった場合でも解決法を見つけることができないなどが、高齢者の皆さんの反応でした。なかには、せっかくダウンロードができたのに、「ソフトウェアが不具合を起こしたりPCが故障したりするのではないか」と利用に抵抗感を示す方も居られました。
 もちろん、運用段階でも、アイコンがいろいろとあってそれらの意味が分からない、ページデザインがアプリのバージョンアップで突然に変更され、新しいデザインでは操作が分からないといった声をいくつもいただきました。

 私たちは、アプリ導入を検討する段階で、以下の二つについて留意すべきであることに気が付きました。一つは、アプリ導入段階でこそ、手厚い支援が求められるということです。アプリ自体が優れたものであったとしても、導入にためらいを感じる利用者が減るわけではありません。丁寧に書かれているガイドブックはあるに越したことはありませんが、心理的にためらいがある利用者には、人による案内とトラブルサポートが必ず必要です。実際、遠隔ではありますが、観光ガイドさながらに一挙手一投足の手助けをしたことによって、導入が促されました。導入段階で躓かないようにするには人の介在が必要なのです。既成アプリを使うため、直感的に利用できるようにするデザインの工夫・改善を追加できない場合には、やはり人手をかけることが必要なのです。

 二つ目は、利用者に寄り添ったアプリを選ぶべきということです。一見当たり前のことですが、バーチャル会議を提案する側は、しばしば主催者の想いが強くなるがゆえに利用者にとってはオーバースペックなアプリを押し付けてしまいがちです。それを防ぐには、手間と時間がかかっても、アプリを選定する際には利用者に複数の選択肢を示して、事前にそれぞれ体験利用をしてもらうことが有効でした。高齢の利用者にとっては、単純なアプリが使いやすいアプリであるということも少なくありません。何より、自分達が比べて決めたアプリを使うという納得感が、導入への抵抗感を小さくしてくれるようでした。

 高齢者が気兼ねなく参加できるリモート会議の要件は、導入時の人の介在とアプリ選択の納得感にある。そのことを学ばせていただきました。

 この連載のバックナンバーはこちらよりご覧いただけます。


※記事は執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。
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