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リサーチ・フォーカス No.2021-005

景気回復と環境改善の両立を目指して動き始めるインドの廃車政策

2021年04月22日 熊谷章太郎


2021 年3月、インド政府は、廃車政策の草案を公表した。本政策は、車検や廃車に関する制度を整備し、老朽化した車両の廃棄と環境性能の高い新車への買い替えを促進することで、景気回復と環境改善の両立を目指すものである。

廃車の対象となる車齢20 年超の乗用車と車齢15 年超の商用車は約1,000 万台存在するとみられ、これは2010 年代後半の年間販売台数の2倍強に相当する。廃車された車両が全て新車に置き換えられると仮定すれば、その経済波及効果(生産誘発額)はGDPの約2割に相当すると試算される。

ただし、所得環境の悪化を受けて低価格帯の中古車への選好が高まっていることなどを踏まえると、大半は中古車に買い替えられる公算が大きい。また、政府は廃車政策を段階的に実施することを計画しているため、同政策の経済や環境へのプラス効果は短期間に集中して発現するのではなく、複数年かけて緩やかに表れると考えられる。単年の経済波及効果はGDPの1%以下にとどまり、短期の環境改善効果も限定的なものにとどまると見込まれる。
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