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リサーチ・アイ No.2020-078

日銀の貸出促進付利制度をどうみるか ーマイナス金利深掘りの副作用低減効果は限定的ー

2021年03月23日 大嶋秀雄


2021年3月19日、日銀は金融仲介機能への悪影響を抑制しつつ機動的にマイナス金利深掘りを行うための措置として、「貸出促進付利制度」を創設。コロナオペ等の貸出増加を支援する資金供給制度をカテゴリーⅠ~Ⅲに分類し、その利用額に相当する日銀当座預金に短期政策金利と連動した付利を行うことで、マイナス金利の影響を緩和するもの。

マイナス金利の銀行全体への収益影響には、マイナス金利支払いによる直接影響と、金利低下が預貸金利鞘を縮小させる間接影響が存在。前者は21年2月の日銀当座預金残高では年間300億円程度。後者の試算は難しいものの、マイナス金利導入後の16年度の実績をみれば、銀行の預貸金収益(貸出残高×利鞘)が前年度から約2,300億円減少。

一方、付利による銀行収益へのプラス影響は、マイナス金利が▲0.2%に深掘りされ(▲0.1%ポイント)、カテゴリⅠ~Ⅲの金利が、0.1%ポイントずつ上乗せされると想定すると、足元のオペ残高(128兆円)×0.1%で約1,280億円と限定的。実際は、日銀が各カテゴリの金利を均等に上げるとは限らず、引き上げが小幅にとどまる可能性も。

上記のように、マイナス金利深掘りは、幾分軽減されるとはいえ、銀行経営を圧迫することには変わりなく、さらにそうした政策が必要となる経済環境では、銀行の経営環境は一段と悪化している可能性大。金融仲介機能への影響を考慮すると、マイナス金利深掘りは引き続きハードルの高い政策判断。
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