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統計データ利活用の現状と今後:公的統計の利活用(全体像と活用ツール)

2021年03月18日 菅章


背景
 昨今、ありとあらゆる分野においてデータ利活用の重要性が叫ばれている。民間企業においては従前から数値・データと格闘していた経理・財務や情報システム等の領域に限らず、経営企画、営業、生産、人事、総務、法務等広範な領域でデータに基づく意思決定が求められるようになっており、経験と勘に基づく従来型のマネジメントを補強する強力なツールとしてその必要性が高まっている。一方、公共分野においてもEvidence-Based Policy Making(以下、EBPM)の概念が提唱され、これまで以上に数値・データを重視した政策実行、意思決定が重要視されるようになっている。

 このような背景の中、統計スキルを持つ人材の価値が高まっており、データ解析に秀でている、いわゆるデータサイエンティストだけでなく、すべての職種・階層においてデータを読み解く力が求められるようになっている。その一方で、様々な分野において、そもそもどのようなデータが利用可能で、どのような解析手法が存在しているのか、ということを理解することもまた非常に重要である。「統計データ利活用の現状と今後」と銘打ち、公的統計や民間ビッグデータとしてどのようなものが存在しているのか、どのように利活用されているのか、という点について論じていきたい。本稿では、特に公的統計の利活用について全体像と主な活用ツールについて紹介する。

統計法
 公的統計の概要とその利活用については、統計法(平成19年法律第五十三号、平成30年法律第三十四号により改正)に詳しく規定されている。国の行政機関・地方公共団体等が作成する統計である公的統計(調査統計の他、業務統計や加工統計も該当)は行政利用のみならず、民間企業の意思決定や研究活動等、社会全体で利用されるべき情報基盤として位置付けられており、国勢統計(国勢調査)、国民経済計算、その他特に重要な統計を「基幹統計」と位置付け、この基幹統計を中心に公的統計の体系的整備が図られている。



 公的統計の調査結果(集計データ)は「政府統計の総合窓口(e-Stat)」等を通じて公表されている他、統計的研究や教育等の公益的利用については二次的利用(公的統計ミクロデータ利用)が認められており、利用目的等に応じてオーダーメイド集計・匿名データ提供・調査票情報(個票情報)提供の3サービスが提供されている。平成30年統計法改正により、調査票情報(個票情報)提供の利用要件が緩和された(従前は公的機関に限定されていたが、学術研究目的での利用が認められた)。2020年2Q以降は新型コロナウイルスの影響によって利用数水準は若干低下しているが、今後、中長期的には増加していくものと推察される。




公的統計利活用のツール・窓口
 上述の通り、公的統計の調査結果については集計データが「政府統計の総合窓口(e-Stat)」に公表されている。e-Statは政府統計ポータルサイトであり、全ての政府統計を検索・閲覧できる機能が用意されている他、各種グラフや時系列表を作成する統計ダッシュボード機能や、各種統計データを地図上に表示して視覚的に把握できる統計GIS機能(jSTAT MAP)等が備えられており、民間・公共を問わず幅広い利用者に公的統計利活用ツールを提供している。同様に民間・公共を問わず提供されているサービスとして、経済産業省・内閣官房が提供する「RESAS(Regional Economy Society Analyzing System)」では産業構造や人口動態、人の流れなどの官民ビッグデータが集約され、可視化されている。また、地方公共団体向けには「Data StaRt」というデータ利活用支援サイトがあり、地方公共団体におけるデータ利活用の先進事例・研究事例や取り組みのポイント等のコンテンツ、利活用相談窓口等が用意されている。上述の二次的利用(公的統計ミクロデータ利用)については「miripo」というミクロデータ利用ポータルサイトがあり、二次的利用(公的統計ミクロデータ利用)についてのガイダンスや利用実績一覧等が公表されている。



 上述の公的統計利活用に関するポータルサイト等について、e-Statを運用管理する独立行政法人統計センターの他、Data-StaRtやmiripoについては2018年4月和歌山県に開設された独立行政法人統計データ利活用センターが所管しており、同センターはICTを活用した高度なデータ解析の実現、先進的なデータ利活用推進をミッションとしている。今後、同センターの取り組みが進んでいくにつれて、日本における様々な場面でのデータ利活用がいっそう普及し高度化していくものと思料する。

※記事は執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。
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