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リサーチ・レポート No.2020-039

世界の金融都市の類型と日本への示唆~一極集中を是正して都市分散型の国際金融国家へ~

2021年03月18日 野村拓也


東京に金融機能が一極集中している日本と異なり、世界には、規模は小さくても特徴的な金融機能を有する都市が多く存在。特徴別に分類すれば、以下の通り。

「第2金融センター」:当該国の主要都市よりも規模で劣るものの、総合的な金融機能を有する都市。豪州のメルボルンは、経済規模はシドニーに次ぐ第2位ながら、複数の国内大手行、大型退職年金基金が本拠を構えており、個人向け資産運用の関連業種が集積。

「機能型金融都市」:特定の金融取引や金融関連業者が集積する都市。
① デリバティブ:米国のシカゴは、2大取引所におけるデリバティブ取引の件数がニューヨークよりも多く、証券/商品仲介業の雇用を多数創出。近年は、投資助言会社なども増加。
② 資産運用:英国のエジンバラは、歴史的に多くの資産運用会社の本拠地であり、外資系金融機関も当地の運用会社を買収する形で進出。近年はフィンテック企業等の取り込みも進展。
③ ベンチャーキャピタル:カナダのバンクーバーは、テクノロジー人材が豊富で所在するブリティッシュ・コロンビア州がスタートアップを積極的にサポートしていることから、ベンチャーキャピタルが集積。
④ グリーンボンド:ルクセンブルグは、グリーンボンドの専門取引所が創設され、関連情報・データを活用した新ビジネスも活発であり、国際的なプレゼンスを向上。
⑤ 暗号資産:スイスのツークは、地域として暗号資産・ブロックチェーン技術の普及に注力しており、規制を含めた業務環境を整備。法人税率の低さもあり、暗号通貨に関連した企業が集積。
⑥ ミドル・バックオフィス:米国のフェニックスは、賃金等の人件費が安価であり、他の大都市と比較して不動産コストが抑えられることから、大手金融機関のミドル・バックオフィスが集積し、雇用を創出。

日本においても、金融機能の一極集中の是正、分散化について検討の余地あり。東京以外の都市は、「第2金融センター」と「機能型金融都市」のどちらを目指すのか、後者の場合、どのような「機能」に注力するのか、検討することが必要。政府としても、国全体の総合的な金融機能の向上を図るべく、「都市分散型の国際金融国家」の形成に向けた支援を検討すべき。
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