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リサーチ・レポート No.2020-037

欧米主要行の2020年度決算 ~危機影響は限定的にとどまるも、今後の回復は依然不透明~

2021年03月09日 佐倉勲谷口栄治


コロナ危機は2008年の金融危機以来となる本格的な経済ショックであり、金融機関の業績悪化を受けた金融システム不安に対する懸念が存在。もっとも、欧米主要行の2020年決算をみれば、ネット金利収入の減少や信用コストの増加等により商業銀行業務の収益は大きく下押しされたものの、投資銀行業務やトレーディング業務が好調に推移した結果、総じて業績悪化は比較的軽微に。決算から見えた特徴は以下の通り。

ネット金利収入については、利下げを背景に欧米銀とも利鞘縮小が顕著。貸出残高も、社債への借換等により前年比減少~横ばいの水準。欧銀では、利鞘確保に向けて、顧客預金にマイナス金利を適用する動き。

投資銀行業務関連収益は、IPO関連収益や社債引受の伸び等を受けて過去最高水準となったほか、マーケッツ関連収益も、金融市場のボラティリティの高まりを受けて大幅に増加。もっとも、特別買収目的会社(SPAC)によるIPO急増など、過剰流動性の下でのバブルを懸念する見方も存在。

信用コストは、欧米銀とも上期に大きく増加したものの、下期は、倒産件数の減少や景気回復期待から減少し、引当金を取り崩す動きも。また、返済猶予を適用した貸出の多くが返済を再開しているものの、現状まで信用劣化は限定的。このほか欧銀は、人員・店舗の削減により営業経費を抑制し、経費率を維持。

バランスシートは、多額の預金流入を受けて拡大。米銀では、米国債や不動産担保証券等を投資対象とする満期保有債券の持ち高が増加するなど、余資運用の重要性が増大。欧米金融当局が株主還元規制を課すなか、欧米主要行の普通株等Tier1(CET1)比率は軒並み上昇。

今後の業務環境について、欧米主要行は、信用コストの減少を見込む一方、ネット金利収入の伸び悩みや、投資銀行業務、マーケッツ関連収益等の平準化を予想。厳しい環境下、引き続きコスト削減を推進する意向。

欧米銀の決算から得られるわが国金融機関経営や金融システム安定に向けた示唆は以下の通り。
①商業銀行にとっては厳しい環境が当面継続。新たな成長領域への進出とデジタル化による収益性改善が鍵。
②政府当局は、「倒産防止」のみならず、「金融市場の不安定化リスク」にも配慮した経済運営が必要。
③貸出等の間接金融に偏重したわが国金融システムの変革に向けた検討が課題。
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