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JRIレビュー Vol.2,No.86

ポスト・コロナで急成長するIoTインダストリー・エコシステム

2021年02月26日 木通秀樹王婷


新型コロナで、私たちの生活、仕事の方法、社会の在り方などが大きく変化した。この間、世界中で、「自動配送ロボット」、「検査ロボット」、「リモート医療」、「トレーシングシステム」、「テレワーク、オンライン授業」、「スマートビルディング」、「工場自動化」、「Additive Manufacturing」、などが相次いで世に出た。ここで注目されるのは、2、3カ月という短い期間で、いわゆるコロナテックが出現したことである。

短期間でコロナテックが急速に市場投入された背景には、複数のコア技術の急速な進化がある。具体的には、①製品や周辺環境のデータを取得するセンサー技術、②データを分析してアクションを決める演算分析技術、③アクションを実装する駆動技術、④基地局と端末、端末間などの通信技術、⑤各種の情報を使いやすい形で授受するHMI技術、である。いずれも、デジタルデータとハードウェアを組み合わせるIoTに欠かせない技術である。

近年、これらの技術が急速な発展を遂げた背景にはコア技術の基盤となる半導体技術の進化があった。これにより、高度で複雑な製品のレベルで実施されてきたモノづくりの革新が、小型マイコンチップの高性能化と低価格化によって、モーターや電池などの部品レベルでも実現できるようになった。こうした革新を担う「インテリジェントモジュール」を用いることで、部品単位での自律的な調整が可能になり、摺り合せが簡素化して短納期化、開発コスト削減、市場ニーズへの対応力向上を実現した。

革新技術の進化とインテリジェントモジュールによるコロナテックの誕生を後押ししたのが、IoTプロダクツを迅速かつ柔軟に開発、生産するためのエコシステムである。その代表例に深圳がある。深圳は、新しい発展モデルを模索し、シリコンバレーに学びプラットフォームとなる研究機関整備、人材誘因政策、金融政策によってインキュベーションのエコシステム構築の施策を取った。また、企画、設計を機能分離し、オープンな部品クラスターを形成した。こうした体制がシリコンバレーのITと深圳の製造業の基盤を連携させることにつながった。

IoTインダストリーのエコシステムと従来の大企業を頂点としたバリューチェーンを比較すると、①市場ニーズを捉えて企画する主体の多重性、②製品の設計、仕様の決定構造、③生産機能の管理体制、④サプライチェーンの開放性、⑤影響力の源泉、などの面で大きく異なる。こうしたIoTのエコシステムは、シリコンバレーでITのプラットフォームによってエコシステムを形成したのと同様に、ハードウェアとITによるIoTのプラットフォームを形成する。

今後一層重要となるIoT市場の覇権に日本企業が食い込むために、三つの方策を提言する。一つ目は、日本の市場で多様なニーズを掘り起こすインテリジェントモジュールの新産業クラスターを創出することである。二つ目は、日本市場に合った企画設計企業の育成を進めることである。企画設計企業は、市場ニーズ把握力を中心として、先進技術と汎用技術のインテグレーション力などを獲得する必要がある。三つ目は、柔軟な組み立てクラスターを形成して、エコシステムから最終的に製品を生み出すための組立・生産を行うことである。

IoTと結び付いたメカニクスに新たな市場が生まれる。こうした市場の変化を捉え、差別化された組立・生産、企画設計、高品質の要素技術を活用したインテリジェントモジュールなど、日本が独自の強みを生かした高い競争力を持つ日本版のIoTインダストリー・エコシステムを形成することが求められる。
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