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リサーチ・フォーカス No.2020-042

コロナ禍に苦しむ米国クレジットカード業界~利用者の裾野拡大と新しい生活様式への対応が回復の鍵~

2021年02月22日 野村拓也


米国では、コロナ禍の影響を受けて、クレジットカード・ビジネスが低迷している。具体的には、外出自粛により外食や旅行など、クレジットカード決済が利用される消費が大幅に減少しているほか、現金給付等による手許資金の増加を背景に、利用するカードをクレジットカードからデビットカードに切り替える動きもある。実際、VISAのデータによれば、2020 年4~6月期のクレジットカード決済額は前年同期比▲21%と落ち込んだ。本年1月末のクレジットカードローン残高も前年比▲12%と、コロナ禍によって資金需要が拡大しているなか、際立って減少している。

加えて、米国のクレジットカード・ビジネスは、若年層における債務に対する保守的な考え方の浸透や、還元率の高いリワードプログラムを組み込んだデビットカードの登場などにより、構造的に業績に対する下押し圧力がかかっている。コロナ禍が収束して消費活動が回復した場合でも、大幅な伸びを期待できない可能性がある。

こうしたなか、クレジットカードを発行する金融機関やフィンテック企業は、消費者のクレジットカード利用を高めるため、以下の施策を講じている。
① クレジットカードが持てなかった層がデビットカードに近い感覚で利用できるカードや、若年層の関心が高い暗号通貨で決済可能なカードの新規発行のほか、複数のカードの管理を容易にするアプリの開発等により、利用者の裾野を拡大。
② 旅行や外食を中心に優遇していたリワードプログラムを、コロナ禍を受けた新しい生活様式のなかで支出が増加している食料品、ストリーミングサービス、オンラインショッピング等も優遇する仕組みに見直し。

市場慣行の相違があるため、米国の取り組みがそのままわが国に当てはまるわけではないものの、わが国のクレジットカード・ビジネスにおいても、コロナ禍での新しい生活様式や若年層の志向変化等を受けた利用者の行動変容を踏まえ、情勢に適した対応を検討する必要があろう。
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