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リサーチ・レポート No.2020-036

コロナ危機下で拡大局面が続く米国クレジットサイクル~企業債務のソフトランディングは前例のない挑戦に~

2021年02月19日 大嶋秀雄


コロナ危機を受けて、世界的に企業債務が増加するなか、危機前から過去最高水準にあり、不良債権化が懸念されていた米国の企業債務は、足元さらに急増し、持続可能性への懸念が高まっている。

過去の日米のクレジットサイクルをみると、わが国の円高不況や米国ITバブル崩壊の際には、景気後退期においてもクレジットサイクルの拡大局面が継続した。これらの事例では、①経済ショックに対する政策対応でクレジットサイクルの後退を回避した後、②景気悪化懸念等から金融緩和が長期にわたり維持されたため、③債務が膨張して金融不均衡が拡大し、④深刻な金融危機に繋がった。

上記を踏まえ、足元の米国の状況をみると、コロナ危機による深刻な経済減速から持ち直しつつあるものの、感染収束への道筋は依然不透明で、雇用回復の遅れ等を背景に金融緩和は長期化する見通しであるなど、過去の「景気後退+債務拡大」のケースとの類似点がみられる。また、今後のクレジットサイクルを行方を展望しても、企業倒産の増加や不動産価格の下落によるクレジットサイクルの早期転換は見通し難い状況である。

クレジットサイクルの拡大局面が続き、金融面の不均衡が拡大して金融危機に繋がる事態を回避するため、米国をはじめとする各国当局は、前例のない「企業債務のソフトランディング(デレバレッジ)」に挑戦しなければならない。今後は、①過度な金融緩和の抑制と産業支援を軸としたコロナ対応、②コロナ危機に伴う債務の負担軽減、③ノンバンク等による過剰貸出の抑制、④資産価格の乱高下を回避する政策運営、⑤企業の再編・整理と不良債権処理の促進、といった施策を総合的、かつ、早期に導入する必要があろう。

これらは、コロナ危機で企業債務の増加がみられるわが国でも求められる施策と言える。長期的な金融システムの安定性を確保する観点から、わが国当局においても早期の検討が求められる。
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