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RIM 環太平洋ビジネス情報 Vol.21,No.80

新たな転換期を迎えるアジアの電力政策-環境保護と電力供給の安定は両立出来るか

2021年02月15日 熊谷章太郎


コロナ禍を受けた今後のエネルギー需要の見通し引き下げ、在宅勤務をはじめとした生活様式の変化に伴うエネルギー需要の変化、環境保護への意識の高まりなどを背景に、アジア各国は電力を中心にエネルギー政策の抜本的な見直しを進めている。

近年のアジアのエネルギーミックス(電源構成)見直しの動きをみると、石炭火力発電への依存度を引き下げる国が増えつつある。また、国内ガス資源の枯渇やダム建設に伴う環境破壊などを背景に、ガス火力・水力発電への依存度の高い国では、これらの発電比率を引き下げる動きも出ている。各国に共通するのは再生可能エネルギーによる発電比率の引き上げであるが、再生可能エネルギーの発電・蓄電に関する技術的制約が解消されておらず、大規模導入により電力供給が不安定化するリスクがある。

再生可能エネルギーが導入制約を抱えるなか、各国のエネルギーミックスの見直しペースは経済・社会・政治状況によって揺れ動くとみておくべきである。絶対的貧困や失業といった社会問題を抱える低所得国は、経済成長を阻害しかねない化石燃料への依存度の引き下げに慎重なスタンスで臨むものの、環境悪化による健康被害などが深刻化するなかで難しい取捨選択を余儀なくされるであろう。環境保護に重点を置く国では、電力コストの上昇や供給不安定化が景気に悪影響を及ぼせば環境重視の政策スタンスの見直しを求める声が高まっていくと予想される。反対に、再生可能エネルギーの補助金政策の拡大により経済成長と環境保護の両立が進む国では、財政赤字が拡大するなかで補助金削減を含めた政策の見直しが行われると見込まれる。

わが国はこれまで高効率の火力発電所の輸出を中心にアジア新興国の経済成長と環境保護の両立を支援してきたが、各国の電力政策の変化を受けて、輸出戦略も抜本的な見直しを迫られている。再生可能エネルギー関連の輸出競争力が限られるなか、当面は、脱硫・脱硝装置や廃熱・排熱を利用した発電装置など、既存発電所の高効率化や環境負荷軽減につながる機器が輸出の中心となるだろう。中長期の輸出のけん引役は現在国内で進められている技術開発や実証実験の行方に左
右されるが、再生可能エネルギーを含めた発電効率の高い発電機器、CO2の回収・有効利用・貯蔵施設、次世代蓄電池、VPP(仮想発電所)やP2P電力取引といった分野における輸出拡大が期待される。
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