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2008年11月19日

2009年米欧経済見通し ~金融不安が続くなか、欧米ともにマイナス成長へ~

< 要 約 >
1.  サブプライム問題は、米欧を中心とする深刻な金融システム危機に発展。米欧各国政府による公的資金注入をはじめとした対応策を受け、緊張度合いは若干緩和したものの、住宅価格下落や景気の悪化を受け、金融機関の損失計上は今後も増加する可能性が高く、金融危機は容易には解消されない見通し。また、新興国、とりわけ中東欧への危機波及は、同地域向け与信の大きい欧州金融機関にとって追加の負荷に。
2.  こうした情勢を踏まえた上で、2009年の米欧経済を展望するうえでポイントとなる以下の3点について、個別に検討。

(イ)金融危機と住宅価格調整の終息時期の目処
 (1)金融危機が解消されるには、少なくとも米欧での住宅価格の下落に歯止めがかかる必要。米国での住宅価格下落には、金融機関による差し押さえ物件処分売りに伴う供給増加が作用。こうした処分売りが今後も足許水準で推移すると想定すると、住宅価格が前年比プラスに転じるのは、2010年秋以降と試算。
 (2)ユーロ圏・英国の住宅価格は、可処分所得対比で各15%、30%前後割高と試算。ユーロ圏では今後価格調整が本格化し、調整完了は早くとも2010年入り以降となる見込み。既に前年比▲10%超下落している英国でも、調整完了は2010年央以降となる見込み。

(ロ)金融危機の実体経済への影響
 (1)金融危機により、米欧金融機関の貸出姿勢が厳格化するなか、米欧ともに設備投資が2009年央にかけて大幅に落ち込む公算。
 (2)米国では家計が未曾有の規模の債務を抱えるなか、今後債務返済圧力が強まる公算。米国家計は可処分所得対比で20%前後の過剰債務を抱えており、今後3~5年にわたって消費が低迷する可能性も。
 (3)ユーロ圏でも、住宅ブームに伴う家計債務増大がここ数年の消費を押し上げてきたため、債務調整下で消費は当面ゼロ成長が続く見通し。英国でも、2006年以降債務増大により貯蓄率は5%ポイント押し下げられており、今後は貯蓄率がその分上昇を余儀なくされる公算。

(ハ)オバマ新政権の景気対策
  (1)オバマ次期米大統領は、積極的な景気テコ入れ策を打ち出すことを表明。既に1,500~2,000億ドル規模の対策が検討されている模様ながら、雇用の一段の悪化を回避するにはGDP比で3%規模の需要喚起策が不可欠で、効果は景気底割れ回避にとどまる公算。
  (2)なお、欧州でも景気対策に着手しているが、現在検討されている対策は、中小企業の資金繰り対策が主で、需要押し上げ効果は極めて限定的。
3.  各国経済の見通しは以下の通り
 イ)米国:「金融市場の混乱」と「実体経済の悪化」の負の連鎖が作動するもとで、景気悪化が続く見通し。とりわけ、政権交代による政策の端境期となる09年春にかけては、マイナス成長が続く見込み。一方、09年春以降は、オバマ新政権による景気対策を受け、景気の悪化に一時的に歯止めがかかる見通しながら、力強い回復基調に転じるのは困難で、その後も極めて停滞感の強い状況が続く見込み。

 ロ)欧州:ユーロ圏では、景気対策効果が限られるなか、(1)雇用情勢の急速な悪化や住宅価格の調整本格化を受けた個人消費低迷、(2)需要低迷や金融不安が持続するもとでの設備投資の減少、などから今後数四半期にかけて景気悪化が続く見通し。英国でも、(1)雇用情勢の急速な悪化や家計のバランスシート調整を受けた個人消費の低迷、(2)成長のけん引役であった金融・不動産セクターの不振、などから今後数四半期にかけて大幅なマイナス成長が続く見通し。
4.  上記のシナリオに対するリスク要因としては、米国財政赤字の大幅拡大を受けた(1)ドル安加速、(2)長期金利上昇がある。こうしたリスクが顕在化すれば、「金融市場混乱」と「実体経済悪化」の負の連鎖が一段と増幅される恐れ。
< 目 次 >
 
  1. 深刻化する金融危機
    (1)金融市場動向
    (2)米欧金融機関の資本不足問題
    (3)新興国への伝播


  2. 持続する米欧住宅価格調整
    (1)米国住宅価格下落の背景
    (2)米国住宅価格底打ち時期の目処
    (3)欧州住宅価格底打ち時期の目処


  3. 金融危機の実体経済への影響
    (1)設備投資への影響
    (2)米国消費への影響と家計の過剰債務
    (3)欧州消費への影響と過剰債務


  4. オバマ新政権の景気対策


  5. 各国・地域経済見通し
    (1)米国経済
    (2)ユーロ圏経済
    (3)英国経済


  6. リスク要因
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