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女性の栄養・食生活という視点を踏まえた少子化対策

2021年01月13日 小島明子


 厚生労働省(※1)によれば、1980年代前半以降、低出生体重児(2,500グラム未満)の割合は年々、増加の傾向にあった。最も割合が多かったのは2007年の9.65%で、その時点をピークにやや減少しているものの、未だに約9%程度であることに変わりはない。OECD(※2)によれば、日本の低出生体重児の割合は、ギリシャに次いで2番目に多い。最も少ないのはアイスランドであり、フィンランド、エストニアと続くが、約4%弱にとどまっている。先進国であるにもかかわらず、日本の低出生体重児の比率が非常に高いのである。少子化が進み、子どもの数が減っている日本においては、低体重出生児を減らすことも少子化対策の1つの課題であるといえる。

 低出生体重児が多い主な理由の1つとしては、若い女性の「やせ」(低体重)の問題が挙げられる。「やせ」とは体重を身長の二乗で割って算出を行う「体格指数」であるBMIとして、18.5未満の場合を指す。妊娠前に「やせ」であった女性では、ふつう体型の女性に比べて早産や低出生体重児を出産するリスクが高くなることが懸念されている。「やせ」の女性は、15~19歳で21.0%、20~29歳で20.7%、30~39歳で16.4%であり、若い年齢の女性ほど割合は多くなっている(※3)。痩せている女性が美しいという憧れから、無理なダイエットを行う、あるいは、栄養や食生活に対する正しい知識が少なく、必要な栄養を十分に摂取していないことが原因として挙げられる。

 国立研究開発法人 医療基盤・健康・栄養研究所(※4)によれば、20歳代30歳代の女性では、5人に1人が朝食を欠食し、肉類や魚介類等から摂取できるたんぱく質、野菜、カルシウムの摂取量が少ないことが指摘されている。例えば、朝食を毎日きちんと摂取し、昼食や夕食の主食が麺類やパンのときは、主菜、副菜を意識して適切に摂取するといった食生活を心掛けることだけでも少なからず栄養の改善にはつながると考えられる。
 日本総合研究所が20代~30代の女性に実施した調査(※5)では、「女性に推奨される食行動」の認知度は総じて低いことが明らかになっている。インターネットを活用することで、気軽に取得できる情報が多くなっているとはいえ若い女性に対して、正しい栄養・食生活に関する情報提供の機会を増やすことが求められている。

 2020年9月に発足をした菅内閣は、少子化対策の一環として、不妊治療の保険適用拡大を掲げている。今後、すでに不妊の問題を抱える方への支援にとどまらず、若い女性が、将来、妊娠・出産を希望したいと考える際に、妊娠・出産に適した健康的な体づくりができるようサポートする施策も有効であろう。正しい栄養や食生活に関する情報提供の拡充を含め、長期的な視点に基づく施策をぜひ期待したい。

引用文献
(※1)不妊治療と仕事の両立サポートハンドブック(厚生労働省)p.2
(※2)Health Status 2018(OECD)
(※3)令和元年国民健康・栄養調査(厚生労働省)
(※4)「妊産婦のための食生活指針の改定案作成および啓発に関する調査研究報告書」(国立研究開発法人 医療基盤・健康・栄養研究所)
(※5)平成30年度 子ども・子育て支援推進調査研究事業「妊娠・出産に当たっての適切な栄養・食生活に関する調査」(株式会社日本総合研究所)


※記事は執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。
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