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2008年10月30日

円高による輸出受取額・輸入支払額減少の偏りとその影響

【要 旨】
1. 円高で外貨建て輸出入の円換算額が変化することによって日本と海外との貿易受け払い額が変わる影響を試算してみると、日本全体では、外貨建て輸出の円換算額減少(約9.5兆円)と外貨建て輸入の円換算額減少(約9.9兆円)がほぼ打ち消し合い、差し引きではわずかながらプラスとなる(GDP比約0.1%)。
2. 地域別にみると、製造業中心、輸出依存の経済構造、産業構造を持つ中部では、ドル建て取引、ユーロ建て取引、その他通貨建て取引がすべて輸出超過であるため影響が大きく、円換算の純輸出額減少はGRP比で約マイナス1.9%と、全地域の中で突出して大きなマイナスとなる。
3. 関西も、中部ほどではないが、全国平均に比べると輸出超過型であり、外貨建て輸入の円換算額減少の効果が小さく、輸出の円換算額減少の影響が色濃く出るため、換算率変化による純輸出額減少はGRP比で約マイナス0.1%となる。
4. 関東は、日本最大の非製造業集積地であり、輸出関連企業が占める大きさは中部や関西ほどではない。また日本で最も人口が多いため、それに応じて輸入も多い。このため、外貨建て輸入の円換算額減少が輸出での円換算額減少を上回り、純輸出額はGRP比で約0.5%増加する。
5. 中国、九州、その他の地方でも外貨建て輸入の円換算額減少の効果が大きいため、円高による換算率変化で純輸出額はGRP比で約0.4~0.5%増加する。
6. 円高進行時に輸出の「為替差損」だけを取り上げてマイナス面ばかりを強調することは、必ずしも全体の状況を表していない。その反面、円高による外貨建て輸出・輸入の円換算額の変化が差し引きプラスでも、所得面から需要面への波及まで考えればプラスがまさるとは限らない。輸出関連企業に集中的に生じる輸出の円換算額減少は、企業業績の悪化と設備投資の減少につながる可能性が大きいが、国内の価格波及を通じて家計や企業に広く薄く分散される輸入の円換算額減少の効果が、どの程度個人消費や設備投資の押し上げにつながるかは、より不確実性が強い。
7. 地域別という観点から整理すると、輸出主導、企業中心の景気回復の象徴的存在であった中部や関西で減速色が濃くなった場合、円換算額の変化で差し引きプラスとなる他の地域でどの程度景気のプラス効果が出て中部や関西の減速を補えるかという論点となるが、これも不確実性が強い。
8. 円高の影響のマイナス面ばかりに着目することは適切でないが、プラス面も強力とは言えない。輸入の円換算額減少がもたらす所得押し上げの波及効果に過度に期待することはできないが、せめて「円高差益」を行き渡らせて、下支え効果を広く共有できるようにすることが肝要である。
目  次
要 旨
1. はじめに
2.全国と各地域の貿易構造
(1)過去の円高局面における貿易構造と最近の状況
(2)全国と各地域の貿易構造の違いによって円高の影響は変わる
(3)貿易取引通貨の違いによっても円高の影響は変わる
3.円高による外貨建て輸出・輸入の円換算額減少の試算結果
4.おわりにかえて
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