2021年01月12日
各位
株式会社日本総合研究所
「自治によるまちづくり」に向けたラストマイル移動サービスの実証
~住民自身による郊外ニュータウンのまちづくりについて事業性と持続可能性を検証~
株式会社日本総合研究所(本社: 東京都品川区、代表取締役社長: 谷崎勝教、以下「日本総研」)は、主催する「まちなかサービス事業性検証コンソーシアム」(以下「本コンソーシアム」)の活動として、住民が自治的に運営に関わるラストマイル移動サービスの実証実験(以下「本実証実験」)を、神戸市北区で行います(注1)。
本実証実験では、住民自身が主体的に運営に関わるラストマイル移動サービスの実現可能性と持続可能性を検証します。本実証実験は、郊外ニュータウンを「住み継がれる街」にアップデートするための、住民自治によるまちづくりである「まちなかサービス」の最初のステップに位置づけられるものです。
■背景
新型コロナ感染症対策としてテレワークが普及したことなどから、郊外生活が再評価されるようになるなか、良質な住宅ストックが残されている、1970年代を中心に数多く建設された郊外ニュータウンも再び注目を集めつつあります。しかし、かつて勤労者のベッドタウンとして栄えた郊外ニュータウンの多くは、生活における立地の不便さのために若い層から敬遠され、今では急速な高齢化が課題となっています。今後、都心に暮らし慣れた子育て世代が集まる「住み継がれる街」へとアップデートしていくには、住むこと以外の機能も取り込むことで、より豊かな生活空間に変化させるまちづくりが必要です。
しかし、個々の郊外ニュータウンは商圏が狭いため、まちづくりに民間企業が主体的に関わることや行政から支援を受けることはあまり期待できません。例えば、高齢者の免許返納や若年層のクルマ離れが進むなか、住宅街の近距離移動をサポートするラストマイル移動サービスはまちづくりの中核としてニーズが高まっていますが、運行距離が短く運賃収入に限りがあるため民間事業には適さず、公共交通としての実現も難しいとされています。
日本総研では、街を住民の共有の資産(コモンズ)と捉え直し、必要な諸機能の管理と運営を、住民のニーズをよく知る住民自身が共同で担う「コモンズアプローチ」が、事業が成立しにくい郊外ニュータウンにおける現実的なまちづくりの方法になると考えています。そこで、民間企業による営利事業でも、行政による公共サービスでもない、このコモンズアプローチによる住民の自治的な活動である「まちなかサービス」の構想を検討し、実現を目指しています。
■本実証実験の内容
本実証実験では、「まちなかサービス」の一つとして、まちづくりの中でも住民の関心が特に高い、ラストマイル移動サービス(注2)をテーマに、その実現可能性などを検証します。
本実証実験では、若い主婦から高齢者までの幅広い年齢層から構成される住民有志が設立したNPO法人を中心に、住民と交通事業者をはじめとした企業とが協力し、事業性と持続可能性の検証を行います。住民と企業との役割分担やラストマイル移動サービスの波及効果などを検証しながら、ラストマイル移動サービスが、「住み継がれる街」をつくる自治的なまちづくりの契機となるかについても検証する計画です。
<実施概要>
テーマ : 地域内限定のラストマイル移動サービスにおける、有償化と住民の
主体的な参加について、事業性と持続可能性の観点から検証
期間 : 2021年1月12日~3月26日
運行地域: 神戸市北区筑紫が丘地区(広陵町、筑紫が丘、小倉台、桜森町の
4自治会にまたがる区域)
実施場所: 優先道路と非優先道路による交差点
運行形態: オンデマンド乗合サービス
・定ルートを走行。乗降ポイントは、運行地域内の78箇所
・利用者は、ポータルアプリ「まちモビ☆アプリ」(注3)
または電話で車両を予約
・配車予約システムは、AI運行バス®とAPI連携(AI運行バス®は、
株式会社未来シェアが開発したSAVS(Smart Access Vehicle Service)
を利用)
運行時間: 8:30~19:30 (平日のみ。土日祝日は運休)
運行主体: 神鉄タクシー株式会社(道路運送法第21条の許可を取得しての乗合旅客)
運転手 : 神鉄タクシーの乗務員(うち2名は住民)
・ 住民2名は、二種免許を取得後神鉄タクシーの臨時社員となり実証に参加
運営主体: 大和物産株式会社
使用車両: ベース車両は、定員5名の普通乗用車(ダイハツ工業「トール」)2台
(コロナ対策として、定員は運転手1名+利用者3名の4名に削減)
利用条件: 会員登録
利用会費: 月額定期券(1500円)または1日券(300円)。
・ 1月12日から1月31日までは無償、2月1日から有償化
・ アプリでなく電話からの予約を希望する会員は、月額300円が別途必要
運営協力: NPO法人「まちなか☆モビリティー神戸北」
・ 本実証実験では主に、会員募集、スマホとアプリ利用の住民サポート、
電話による予約と支払いのサポート、協賛・広告パートナーの募集を担当
●使用車両のイメージ: ダイハツ「トール」
●ルートと乗降ポイント(神戸市北区筑紫が丘地区)
■今後の活動計画
事業の持続可能性をさらに検証するため、本実証実験に引き続き、来年度もさらに3カ月間の実証実験を行うための準備を行っています。本実証実験と合わせて計6カ月間の実証実験の結果、事業性が見込まれると判断された場合には2021年中に準備を開始し、2022年に事業としての実装を行う計画です。
■本実証実験の参加メンバー
【本コンソーシアム一般会員】
株式会社NTTドコモ、関西電力株式会社、ダイハツ工業株式会社
【本コンソーシアム協力会員】
神戸電鉄株式会社、神鉄タクシー株式会社、大和自動車交通株式会社、大和物産株式会社、
NPO法人まちなか☆モビリティー神戸北、みなと観光バス株式会社
【本コンソーシアムオブザーバー】
神戸市
注1:本実証実験は、国土交通省「令和2年度日本版MaaS 推進・支援事業」において、新たなMaaS の構築を牽引するモデルプロジェクトとして選定されています。
注2:ラストマイル移動サービスは、バス停と自宅の間など、従来の公共交通よりもきめ細かな移動をサポートするサービスです。バス停のほか、住宅地内の商店・サービス店舗や公共施設、クリニック等との行き来にも活用されます。本実証実験の対象地のような坂道の多い住宅地では、特にラストマイル移動サービスに対する関心が高まっています。
注3:「まちモビ☆アプリ」は、国土交通省「令和2年度日本版MaaS 推進・支援事業」の支援を受けて開発したものです。
■本件に関するお問い合わせ先
【報道関係者様】広報部 山口 電話:080-7154-5017
【一般のお客様】創発戦略センター 井上 電話:090-5508-2837